Daily #10 ミサンガ

 寝起きのぼんやりした頭で私はベッドを軽く整えていた。


 ――眠い。ただひたすら、眠い。


 そのままベッドにダイブしようかと思ったところへ黒いミサンガが落ちていたのを見つけ、辛うじて踏みとどまった。そのミサンガを手に取り検めたが結び目は固く、切れた様子がない。


「あー……外れたかー」


 私はそのミサンガをお狐様スペースに置いた。


 ミサンガをつけたのは約1年半前。よく行くお寺から真っ直ぐに伸びる、商店街通りで経営している狐面のお店で買ったものだ。


 ミサンガが切れると願い事が叶う。それは夢のような話だ。私も過去に何度かミサンガをつけたことがあるが、一度も切れたことがない。

 大体は結び目が解けるか、緩んで抜けるかのどちらかだ。


 現在私は数種類のミサンガをつけている。露出撮影はしばらくないだろうと見越してのことだ。

 ミサンガは作品の邪魔になる。外すか切らなければならなくなるので、撮影予定があるならミサンガはつけていられない。


 現在ではミサンガをファッションとして取り入れる人も多いが、元来は呪術的な意味合いが強いアイテムだ。

 願掛け、お守り。それは小さい頃からおまじないとして慣れ親しんだもので、特に女子は身近にあったものだろう。


 席替えで好きな人の隣になるおまじない。

 遠足で好きな人と同じ班になれるおまじない。

 絆創膏や文房具などを使用したおまじない、影を踏むおまじない、月の光からパワーをもらうおまじない。


 これらはどれも呪術的な要素を秘めている。

 実際に白魔女と呼ばれる者たちは似たような魔術を使う。原理は同じだ。

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