終始どこか不穏な空気感を漂わせながら話が進み、最後まで読んだら思わずもう一度頭から読み返したくなります。勿論読み返さずとも面白いのですが、一回目ではそこまで深く考えなかった登場人物達のセリフが、二回目では全然違ったものに思えてくるのです。真っ直ぐで、けれど同時に歪んだ想いが何をもたらすのか――しっとりと仄暗い雰囲気と共に、是非確認してみてください。
最後まで読んで改めて怖さが分かる作品でした。たんたんと語られる物語の雰囲気も良かったです。
二度読みをお勧めします。物語に籠められた情念を踏まえながら読み直してこそ、この物語の醍醐味を味わえるはずですので。
海に流される灯籠達。幻想的な祭りの場面から始まるこの話。波間に消えゆく灯籠を見送った後、友人の柳瀬は言います。「皆、蝋燭ばかり流すね」この一言がきっかけとなり、真夏の灯籠流しの不思議が語られて行きます。お話は確かな筆致で淡々と進んでいきます。淡々と進みつつも、ゆっくりゆっくりと歪んで、立ち現われて来る真実がまた恐ろしい。結末まで至った今、背筋がひんやりとする静かな恐怖に包まれています。静かに語られていく『灯籠流し』の隠された一面と道理に外れた情念の物語を是非、体験してみてください。
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