この白く凍てついた日々に、終わりはあるのか

 魔術師ロアンに師事する少女ユーリックが主人公の中華風ファンタジーです。

 魔術師に弟子として育てられることは非常に恵まれているものの、ユーリックはロアンに対して感謝より憎しみや恨みを強く抱いてしまっています。
 ユーリックは幾度となく脱走しては、無意識に惹かれる白い山へ向かおうとするのですが、そのたびにロアンに連れ戻されます。そのために、ひどく叩きのめされることも。

 なぜユーリックが白い山に惹かれるのか。どうしてロアンは、そこまでしてユーリックを手元に置き続けるのか。
 第一部ではそれらを主軸に、ユーリックの魔術師としての成長が描かれます。そしてプロローグで描かれたある少女の死の真実が明かされていきます。

 私のイチオシは、ユーリックの師兄であるトビです。
 吹雪を連想するどこか冷たくて渇いた物語の中、トビだけは温かい。
 ユーリックとの関係が進展するのか気になるところ。今後の物語で、トビがどのような役割を果たしていくのかも注目したいポイントです。

 地の文は多めで、一見するととっつきにくい印象を受けるかもしれません。
 しかし決して読みづらくはなく、丁寧な戦闘描写に、練り込まれた世界設定などなど地の文が多めだからこそ楽しませてくれる形となっています。

 是非とも腰を据えて一読をオススメしたい作品です。


※このレビューは第一部完了時点で書かれました

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