追放から始まる――いや、きっと追放前から始まっていた発展の物語

 国選パーティ『シルハスタ』から追放されてしまった親友ロロに付き合い、共にパーティを離脱した主人公ユルグ。ふたりは故郷の村へ帰ります。

 このユルグですが、故郷では「悪たれ」として知られ、未だに悪印象を抱かれています。一方のロロは、そんな彼に温かい信頼を向けており、共に故郷の村に迫る脅威に立ち向かうこととなるのです。

 ユルグは「悪たれ」と呼ばれていても、相変わらず口は悪くとも、友や故郷のために動ける人間です。
 本人は、そんな「悪たれ」が少しはまともになったのは、一緒にいてくれたロロのお陰だと言いますが、きっとロロはユルグの本質を見抜いていていたからこそ一緒にいたのではないでしょうか。
 ロロや他の仲間たちとの交流で大人になったのだとしても、彼の本質は変わってはいないのです。

 そんなユルグだからこそ、元パーティメンバーの聖女や参謀役は再び彼とパーティを組んでくれます。
 脅威から村を守るために、彼らは村を発展させていきます。

 そんな仲間たちとの信頼関係と、発展の流れが本作の見所です。

 村が発展していくにつれて、ユルグは周囲から認められていきます。
 昔村にいた頃は「悪たれのユルグ」、戻ってきたときには「崩天撃のユルグ」、村が発展してからは「ギルドマスター代理」、脅威を打ち払ったときには「ギルドマスター」。そして一部からは「勇者」。

 村の発展に従って、ユルグ自身も発展していっているのです。
 いや、むしろユルグの成長が人を惹きつけ、周囲を形作っていってるだけなのかもしれません。
 だとすれば、その発展はユルグがロロと共に村を出たときから始まっていたのでしょう。
 この先も周囲の人々に支えられて、大きくなっていくユルグの姿が想像できます。

 転生も召喚もなく、チートもハーレムもない正統派異世界ファンタジー。
 高い文章力に裏打ちされた上質な面白さがあります。

 年末年始の休暇のお供に。よろしければ一気読みでどうぞ!




※このレビューは、最新話が「第39話 オーバーワークな参謀殿」の時点で書かれました。

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