第12話 魔法少女ファイヤーワークス
全員が急いでザコイヤーが現れた場所へと向かう。
既に周りには警察による避難が行われており、魔法で作られた帯が現場を囲んでいる。
「魔法少女現着しましたッチャ!」
「お疲れ様です!
現れたザコイヤーは木のような姿をして振り回す枝にはパワーがあります。
それと建物内にまだ人が!」
「了解ッチャ!
みんな、頼むッチャ!」
「「「了解!」」」
少女たちはそれぞれの変身アイテムに手を触れる。
「「「マジカライズ」」」
掛け声とともに光が身を包む。
カラフルなエフェクトが飛び散り、やがてその姿は魔法少女へと変身した。
「ワタクシとアザレアで建物の人の救助を。
ファイアーワークス、ザコイヤーをお願いできます?」
ファイアーワークスはサイドテールの先端からボウッと火を走らせ、ニカリと笑った。
「おうっ!あたしに任せとけ!!」
「んっ?」
コウキはファイアーワークスの態度に違和感を感じ、その背中を見る。
だが、それが何かわかる前に三人の魔法少女は飛び込んでいった。
三方向へと飛び散り、ファイアーワークスは単独で暴れているザコイヤ―の元へ殴りかかる。
「まずは一発目!」
「イヤァァァ!?」
手には炎が灯っており、ザコイヤーを焼く。
そのまま殴打を繰り返し、最後にはかかと落としで地面にめり込ませる。
「まだこんなもんじゃねぇぞ!!」
両手を合わせて広げるとそこには頭と同じ程の火球が創り出されており、腰を捻るようにして投げつけた。
いまにも身体を起こそうとしていたザコイヤーはそれを避けることができず、その背に直撃して爆発。
「ヤァァァァァァ!?」
ファイアーワークスは地面に降り立ち、ザコイヤーを見下ろす。
ザコイヤーは負けじと葉を手裏剣のように飛ばし、枝を触手のように勢い良く伸ばす。
だがファイアーワークスは葉を燃やし、枝を避け、掴む。
「どっっこいしょー!!」
力の入れた声と共に炎を吹き出し、さながらロケットのように上に飛びあがる。
枝を掴まれたザコイヤーは抵抗が出来ず、そのまま空中へと連れてかれていった。
建物の屋上を越えて何もない空まで行き、ファイアーワークスは手を放した。
そして再びその手に炎を灯らせる。
しかしそれは先ほど見せた赤い炎ではなく、色とりどりの光を見せていた。
「いくぜ必殺!」
ここ一番の一撃がザコイヤーに打ち込まれた。
「打ち上げ花火!!」
衝撃が空気を震わせ、更に上へと吹き飛ばされる。
遠ざかるザコイヤーの声と逆にファイアーワークスが元の場所へと着地した。
「それでは皆さんご一緒に!」
避難途中の市民や野次馬に向かって両手を振るい、上を指す。
そうすると人々は待ってましたと言わんばかりに上を向き、両手を口に合わせる。
すわ何事かと困惑するのはコウキだけだった。
『たーまやー!』
大勢の掛け声と共にザコイヤーがまるで花火のように弾けて消える。
「大・勝・利!」
ファイアーワークスがピースサインを掲げると歓声が上がる。
「な、なぁチャップル」
「何ッチャ?」
「こう、すごいエンターテインメントみたいなことになってるのはとりあえず横に置いておくとしてだ。
花火ちゃんって変身すると性格変わっちゃう系?」
前の世界にもそういう者がいたことを思い出しながらチャップルに問い掛ける。
チャップルは「あぁいや」と答えようとすると、コウキの前にファイアーワークスが駆け寄った。
「よっ、コウキの旦那」
「だ、旦那?」
「改めまして自己紹介だ」
ファイアーワークスは親指で自分を指し、ニカリと眩しい笑みを浮かべる。
「花火の姉にして、もう一人のファイアーワークス。
空野
「……うっそ~ん」
■
「つまり、花火ちゃんの中に火花ちゃんがいるってこと?」
ザコイヤーを倒した後、コウキは最初に合流した公園まで戻っていた。
つつじと金子、チャップルは後処理の手伝いで現場に残り、今はコウキとファイアーワークスの二人だけ。
「そうそう、元々あたしらは双子で別々の身体で生きてたんだけれどな。
派手な事故に巻き込まれて、あたしか花火のどっちかしか生き残れないって状況になってさ。
あたしの臓器を花火に移植したんよ」
さらっとかなり重い背景をいわれてコウキは苦い顔になる。
「そしたら私の魔法少女としての才能と魂が丸っと花火の中に宿ったわけ」
「だから変身すると火花ちゃんの意識が?」
「そうそう。
まぁ一応、意識を花火のまま変身することができるけど戦い向きの性格じゃないからな。
基本的にはあたしが戦ってる」
「だからもう一人のファイアーワークスね。
いま花火ちゃんはどうなってるんだ?」
「意識もあって、話も聞いてるよ。
こう、精神の中に小さな部屋みたいなところにモニターがあってさ。
リアルタイムであたしが見てるものと聞いてるものを共有できんだよね」
あたしの時もそうなってる。と
つまりコウキが自己紹介してるときにも彼女は聞いていたということだ。
「まぁ、これからよろしくな」
「おう、じゃあそろそろ花火と交換するわ」
そう言ってファイアーワークスは変身を解く。
光が身を包み、元の花火の姿へと戻った。
「お疲れ」
「いえいえ、戦ったのはお姉ちゃんですし」
「しかし、驚いたな。
二人で一人の魔法少女か」
「うーん、実質お姉ちゃん一人ですから。
私なんてほとんど戦ったこと無いし、全然大したことないですよ」
「でも君がいなければ火花ちゃんも戦えないだろ。
十分大したことだと思うよ」
「そ、そうですか……」
花火は顔を赤らめ、恥ずかしそうにサイドテールをいじる。
先程見せていた火花と全然違う表情にギャップを感じた。
そこでチャンスマホに連絡が入る。
チャップルからの着信だった。
「おう……わかった。
じゃあさっきの公園にいるから合流しようぜ」
通話を切り、チャンスマホをしまう。
「後処理終わりました?」
「あとは専門業者にまかせるってさ。
みんなこっちに来るって」
「わかりました」
「あと金子ちゃんがみんなでご飯食べようって言ってたらしいけれど。
花火ちゃんはいいかい?」
「はい、大丈夫ですよ。
でも金子ちゃんの提案かぁ」
遠い目になる花火にコウキは少し動揺する。
「ど、どうした?」
「金子ちゃん、金銭感覚お化けなのでだいたいお高い店なんですよね」
「具体的には?」
「回らないお寿司とか、三ツ星のお店とか」
「……財布足りるかな」
「そこは、経費でっ」
「学生の言葉とは思えないなっ!?」
今夜はすき焼きだった。
変身ヒーローが魔法少女の世界に転移した話 projectPOTETO @zygaimo
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