第7話 浮浪者?
街並みはレンガ造りと木造の家が八対二程の比率だった。
掘っ立て小屋の様な家屋は見当たらず、物乞いっぽい人影も特にないので、少なくともこの街の住人は最低限の文化的生活は出来ている様だ。
「まあ教会の大神殿のある様な大都市だしな」
セーフティーネットが機能しているのだろう。
因みに道はアスファルト?っぽい感じで舗装されている。
ちゃんと歩道と車道は区分されており、馬車なんかが車道を行き来していた。
んで、次は人。
格好は、シンプルな感じの衣類を身に着けている人が大半だ。
派手な柄物みたいな服装は見当たらない。
顔立ちは堀の深い西洋系が多めで、顔面偏差値は高かった。
「ふむ……」
丁度露店の立ち並ぶ市場の区画に来たので、どういった物があるのか見て回る。
出来合い物は麺類や菓子類。
スープにジュース。
串焼きなどなど。
食材系は魚やトカゲの様な爬虫類。
でっかい芋虫に、元の分からない捌かれた肉。
鳥やネズミなんかの、皮を剥かれただけの原型が分かる物が並んでいる。
「そういや蠅がいないな」
路上での
だが、さっきから一匹も見当たらなかった。
剥き出しの露店なので清潔だからってのは当てはまらないし、気温もそれほど低くないので季節的な物とも考えられない。
「そう考えると、そもそもこの世界には蠅みたいな生き物はいないって事か?」
まあ生態系的に、この地方だけいないって可能性もあるが。
「あと……冷静に考えると、こう言う場所で使い魔とはいえゴキがバッサバッサ飛んでるのって普通問題だよな?」
だが露店や周囲の人間は、全く気にしていない様に見える。
物凄く寛容な人達ともとれるが……
「ひょっとして……お前って周りの人間から見えてない?」
そんな疑問が頭を過り、ちょっとゴキミに尋ねてみた。
まあ流石にそんな訳はないと思うけど。
すると彼女が高度を上げる。
これはイエスの回答だ。
「え?まじで?」
そりゃ誰も気にしない筈である。
姿を見えないようにできるとか、異世界のゴキブリ最強すぎだろ。
「魔法の一種か何かなのか?」
再びゴキミが高度を上げてイエスと答える。
「魔法って万能なんだな。俺も頑張ったら覚えられるかな?」
ああ言っておくけど、透明になって浴場を覗きたいとかそんな下種な理由じゃないぞ。
純粋に魔法が使えたらいいなって意味での呟きだ。
まあこの際趣旨は置いといて、実際はどうなんだろうな?
この世界には魔法があり、この世界の住人はそれを扱える。
だが俺は異世界の人間だ。
魔法がこの世界の法則に乗っ取る物で、それを技術的に習得出来れば誰でも扱える物なら、俺も努力すれば習得できるだろう。
だが技術や知識云々ではなく、生物的に使える仕様とかだったら、残念ながらどれだけ努力しても習得する事は出来ない。
エラのない奴が水中呼吸を出来ないのと同じだ。
「ん?」
俺の呟きに反応して、ゴキミが高度を上げる。
イエス?
おお、じゃあ俺も魔法が使えるのか!
とはならない。
何故なら、ゴキミは俺が異世界から召喚された人間だとは知らないからだ。
つまり彼女の返答は、この世界の人間を基準とした物である。
「ま、出来たらラッキー程度に考えとくか」
そのまま街をぶらついていると、ちょっとした空き地に差し掛かる。
まあ空き地と言うか、ちょっとした廃材なんかが置いてあるゴミ置き場的な場所だ。
「……人か?」
その隅っこに、ボロ布を纏った小柄な人物が座っていた。
体格的に子供だろう。
そしてその両手には、これまたボロボロの子犬が抱きかかえられている。
「……」
ここは教会のお膝元と言える町だ。
そのためか福祉が行き届いているっぽく、街中に孤児や浮浪者の様な人影はなかった。
いやまあ全体を見た訳じゃないので、実際はぽつぽついるのかもしれないが。
……気になるな。
ここは来たばかりの異世界。
しかも此方は引き籠りのベテランと来てる。
自分の事で手いっぱいのこの状況で、他人の事など気にしている場合ではない。
だが、どうしてもその子供の事が俺は気になってしまう。
「取り敢えず……声だけかかてみるか」
正直、俺に何か出来る訳でもないが――まあ教会から貰った金があるので、ちょっとぐらいの施しは出来るが――このまま無視して行ってしまうと、絶対もやもやしたものを長らく引きずる事になるからな。
取り敢えず声だけかけてみる。
拒否られたり無理な事情だったら、まあしょうがないって素直に諦められるしな。
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