第14話 レベルアップ
「あ、あの……ありがとうございます聖女様」
「ああいや……」
目覚めたティティに早速ゴキミが説明してしまう。
俺が聖女である事を。
「聖女様を崇めなさい。そうすればこれからの貴方の人生は、このお方の加護の元、幸福な物となるでしょう」
どう聞いても、怪しげな宗教の勧誘以外何物でもない。
普通なら断られるのが落ちだが――
「は、はい!私聖女様を崇めます!だって……だって……どうしようもなかった私の呪いを解いてくれましたから!」
――それにあっさりと引っかかるティティ。
なんというか、幼い子供を騙しているみたいで心が痛い。
いやまあ騙してはいないんだが、都合よくコントロールしている事には変わりないからな。
「素晴らしい事です。それで?貴方はどうします?」
ゴキミが視線を降ろし、足元のポチンに問いかける。
いやそいつ犬だし、そんなの聞かれても答えられないだろう。
とか思ったのだが――
「わんわん!」
ポチンがまるでそれに応えるかの様に、千切れんばかりに尻尾を振って興奮した様に吠えた。
「おめでとうございます。どうやらこの子も、聖女様を崇拝する事を決めた様です」
「ああ、そうなんだ……」
どうやらポチンは、此方の言葉が理解できる様だ。
まあ犬っぽいだけで、犬じゃないからな――そもそも一つ目出し。
言葉が理解できたとしてもおかしくはない。
後、ゴキミはポチンの言葉が理解できる様だな。
「ん?なんだ?」
その時、『パララパッパパー』と言った感じのファンファーレっぽい音が頭上から響く。
首を後ろに傾けて頭上を見上げると、キラキラと羽が舞い、でかでかと『レベルアップ』の文字が浮かんでいた。
「レベルアップ……」
え?
俺ひょっとして、レベルアップした?
何もしてないのに?
いや、信者が増えると俺の力が増すってゴキミは言ってたな。
て事は……ティティやポチンが俺を崇める様になったから、レベルが上がったって訳か。
……そっか、俺にもレベルがあったのか。
うんまあ、それでこそ異世界召喚だよな。
やっぱレベルがあってなんぼだ。
よし、取り合えずステータスを確認してみよう。
にわかにテンションの上がった俺は、例の呪文を叫ぶ。
が――
「ステータスオープン!」
……
…………
………………あれ?何も出ないぞ?
――何も起こらない。
「聖女様?どうかなされましたか?」
俺が突然叫んだ事に驚いたのか、ゴキミやティティがポカーンとした顔で俺を見ていた。
「ああいや……レベルが上がったみたいだからステータスを見ようかと思ってさ。どうやったら見られるかゴキミは知ってる?」
「レベルの確認ですか?レベルとは感じる物で、目に見える様な物ではございませんが?」
教えて貰おうと思って聞いたら、ステータス全否定の言葉が返って来た。
どうやら目視する事は出来ない様だ。
「あー、そうなのか」
つうかレベルアップ自体は目視できるのに、何故ステータスが見えないのか謎だ。
まあそういう世界って言われたらそれまでではあるが。
異世界に聖女として召喚されました。TSでもなんでもないただのおっさんが~聖女じゃないと追い出された俺のおしっこがガチで聖水な件について~ まんじ @11922960
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