第13話 信仰
「ふーむ……」
帰れないとなると、俺は聖女としての役割を果たすしかないって事になる。
え?
なんでかって?
今現在、邪竜が精霊を封じ込めて、邪悪な魔物が活性化してるって状態だ。
どう考えても放っておいたらその内世界滅びるコースだろ。
それ。
これで特に悪い影響がありませんとかだったら逆に驚きだわ。
つまり、この世界で生きてくなら邪竜は退治しなきゃならないって事だ。
そしてそれが出来るのは俺だけ。
だったらやるしかないだろ?
「取り敢えず……俺は何をしたらいいんだ?」
聖女として邪竜に対抗する為に精霊を解放する。
そこまでは分かるが、具体的にどうすればいいのかまでは浮かんでこない。
情報が無さすぎるし、そもそも、何かをなす様な主体性を持つ人生を送った事のない引きこもりだからな。
「まずは信仰を集めるべきかと」
「信仰?」
信仰という言葉に俺は眉根を寄せる。
そんなもん集めてどうするんだ?
皆の心を一つに束ねて、邪竜に立ち向かえって事だろうか?
「信仰は聖女様のお力に直結致します。ですので、邪竜に対抗する為には人々からの信仰を集める必要があるのです」
信仰が力になるのか。
おしっこが信仰で盛大にパワーアップして、ビームみたいに攻撃できる様になったりしてな。
「むう……」
頭の中で、邪竜のどたまをおしっこビームがぶち抜くさまを想像し、ちょっと微妙な気分になる。
大一番のラスボス戦で、局部丸出しとか嫌すぎ。
更にラストアタックがおしっことか、格好悪いにも程がある。
「聖女様、如何なさいました?」
「ああ、いやなんでもない。気にしないでくれ」
「畏まりました」
「でもまあ……信仰を集めるってんなら、教会の力を借りるのが一番って事か」
信仰と言えば宗教だ。
エテネ教会はこの世界で最大の宗教らしいので――渡された本に書いてあることなので、盛られてる可能性もあるけど――そこの力を借りるのが、信仰集めには一番手っ取り早いだろと思われる。
「いえ、教会に所属したのでは信仰がぶれてしまいますので」
「信仰がぶれる?」
「そうですね。例えば、聖女様が困っている者をお救いになったとしましょう。その者は聖女様に深く感謝し、聖女様の事をその胸に刻み込む事でしょう。そしてそれが信仰となる訳ですが……教会所属の聖女としてその物を救っていた場合、その感謝の気持ちの向かう先が教会になってしまう可能性が高くなるのです」
「ああ……」
実行した人間より組織に信仰が向く。
宗教なら十分考えられる事だ。
「ですので聖女様は、新たに自ら教派を立ち上げるべきかと」
引きこもりの俺に宗教立ち上げろってか?
ハードルたけぇな、おい。
とは言え、出来なきゃ邪竜を倒せないだろうからやるしかない訳だが……
「あー、うんまあ頑張って見るよ」
「まずはあの少女が目覚め次第、自らが聖女である事を明かすのが宜しいかと。呪いを救ってくれた恩義を感じ、信徒一号になってくれる事でしょう」
ゴキミが寝てるティティを勧誘しろと言って来る。
まあ確かに、彼女を辛い環境に追いやっていた呪いを解いたので、彼女の言う通り勧誘はすんなりいくだろう。
けど……
「うーん……なんかそれだと、小さな子に恩を押し付けて宗教勧誘するみたいであんまり気が進まないんけど……」
別に救おうと思っておしっこかけた訳じゃないからな。
放っておけないからやった事に、結果的に下心的な物が付随してしまうのは、ピュアな引きこもりである俺には自分が汚れてしまった様に感じてしまう。
「そうですか。差し出がましい事を口にいたしました。確かに、聖女様が直接お伝えになっては恩着せがましくなってしまいますものね。私の方から彼女に伝えると致しましょう。お任せください」
「いや、そう言う意味じゃなくて……」
全然意味が伝わってねぇ。
「お任せください」
ゴキミが笑顔でもう一度任せろと言う。
どうやら伝わったうえで、俺の意思は無視されていた様だ。
ゴキミ恐るべし。
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