第16話 てりぶる・とらぶる・あぱーとめんと

さわやかな朝今日こそはきっと遅刻しない

扉を開けると花びらのように風とともに舞い込んだ

羽根

廊下を抜けリビングまで

大量の

まるでシュレッダーの中身?雪?桜吹雪?

何かの始まりを告げるかのように


扉が開く


こんもりとうずたかく積もる羽根の山と

馬の首…ではなくばらばらと散らばる鳩の部位

夕べのばちがもう当たったのか

もしや気付かぬ間にイタリアンマフィアの恨みを買ったのか

いいや単純に

誰かの

お行儀の悪い

ディナーの後だった


なぜこんなときに

わくわくするのだろう

こんなだからわたしは

だれからもまともにとりあってもらえない

わたしの悲しみはうそだよと言われ

わたしの喜びは一笑に付され

馬の首のように転がった鳩の首

ちいちゃいな~

わたしの悲劇ってちいちゃいんだな


ちいちゃい喜び

ちいちゃい悲劇

これって幸せなんだろうか

顔を近づけてしげしげと眺める

どんなちいちゃい死にもちゃんと血が流れている


結局職場に電話をして

わたしはいつものように1時間の遅刻をする

素晴らしいいつもの朝

結局のところ

正当に遅刻をすることに

夕べのばちがもう当たったことに

わたしがわたしに望んだとおりに

何もかもがうまくいかないことに

わたしのこころは喜んでいる





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バッドメモリー・ダイアリー 天王野苺 @domico

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