第5話 あんばーすでい

このわたしには責任がある。




天使たちの羽をひとつひとつむしり取って地べたに突き落とした。以来きらきらと光る鱗粉をいつまでもねぶって生きている。




この行列につきたければ色づいた羽は、開いた花弁は丁寧にむしるのがルール。


膝を付いた老兵には歯を剥き出して、手を打って、大声で囃し立てるのがルール。


死んだ者には丁寧に、二百回の鞭打ちを手向けるのがルール。


そんなのはわたしが決めたことじゃないけど。


付いてくるこの長い長い行列に対して、わたしには責任があるのです。




時々膝をついて、この世界の底を覗きこむ。


まだまだ奥にいっぱい沈んでいて、掬い切れない。


この世界がこんな風なのは全てわたしの責任だから、わたしは今日も、石の付いた白金の指輪を着けたまま、水洗便器の奥に肘まで突っ込む。


誰のものとも知れない汚物の詰まり溢れ。その責任はわたしにある。




愚かだなあ。惨めだなあ。浅ましいなあ。


そんなわたしの民たちを許し、今日もわたしは祈る。


彼らがゆるされますように。


この世界がちっともすくわれないのは、全てわたしに責任があるのだから。




この道をすれ違うあなた。


せめてあなたの行き先には、死骸に集る虫たちよりも、花たちの咲くのを多く見られますように。




そう、よぶんに祈る。

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