『腐敗したコーヒーの嗜み方』第30回電撃小説大賞応募作

　2967年。人類は地球の覇者ではなくなった。人間が生み出した、AIという新たな生命によって淘汰されたのだ。しかし、そうは言っても都市は腐敗し、歴史ある技術が消えてしまった訳ではない。今でも、新たな技術は発明されているし、人間が住んでいた都市も、場所によっては今まで以上に綺麗に整備され、AIが生活している。つまり、社会の歯車を動かしていた人間というピースが、さっぱりAIに移り変わっただけなのだ。そして、この事実は同時に人類が絶滅していないことも示唆する。AIは人間を一人残らず蹂躙することが目的ではなく、社会のすり替わりを起こすのが目的だったのだ。
　ある島の中央部、人間の集落があった。しかし、かつての人類のような技術力はもう見る影もなく、人々は畑を耕し、水を汲み、神に祈る生活をしていた。そん…続きを読む