きっとこれは恋じゃないのに。

　――やっぱり付き合わない？

　彼の顔は、傘で見えない。けれど雨粒の滴る傘の下から覗いたスニーカーが、ざり、と地面を撫でたのは見えた。
　自分でも、あまりにも都合が良いことを言っている自覚はある。
　１週間前、告白してきた彼を同じ場所で振っておいて、「やっぱり付き合わない？」は、ひどい。
　彼…高坂幸太朗はしばらく沈黙を置いたあとに、顔を隠すよう下げた私の傘を、手が濡れるのも構わずにそっとあげた。

「理由を聞いてもいい？」

　告白してきた時とは打って変わって、とても落ち着いた表情の高坂に、私は咄嗟に嘘を吐こうとして、やめた。

「友達に、彼氏ができたから」
「……は？」

　高坂は一瞬目を丸くしたあと、弾けたように笑い声をあげた。




■メンヘラ気質のダメ女系主人公が輝く青春ライフ…続きを読む