主人公のロクサーナは少し訳ありで故郷を離れた公女。
しかしその強さは並の人間ではなく、彼女はレイピアを片手に華麗に敵を成敗していく戦士でもあります。
ですが、この物語には主人公がもう一人います。それが自律AIを備えたM.O.V.という巨大ロボット…ブリガンダイン=ヴァージルです。
ロクサーナは相棒のヴァージルに乗って戦うことになるのですが、この戦闘が本当に熱いです。単純なバトルシーンとしてのヴァージルの姿はもちろん、コックピットを操作し、指示を出すロクサーナの勇姿…どこをとっても最高の一言に尽きます。
個人的にこの二人の掛け合いがとても好きで、人とロボなのですが近しい親友や恋人なんかと話しているような掛け合いをするんですよね。
ロクサーナはヴァージル相手に普通の人間のように接したり、時に無機物であることを思い出して気づかったり、相棒に翻弄されたり。
一方のヴァージルは真面目にジョークを言ったり、時には厳しいことを言ったりと、完全なロボットでも人でもないAIだからこそのできる会話というのでしょうか。すごく良い距離感で寄り添いあっていると思います。
物語にはロクサーナ達の頑張りによる泥臭さと同時に、全体を通して華やかさがあります。
世界観、そして引き込まれる表現力はSF好きの方はもちろん、どのジャンルが好きな方にもオススメできる作品です。
ぜひロクサーナとヴァージル、そして二人を取り巻く愉快な仲間達による物語をお楽しみください。続きも楽しみにしております。
もはや、私なんかが評価しても良いのか?
とても素敵なSF作品です。世界観やキャラが徹底的に練られた作品で、当然文章能力も高いです。
SFに必要な細かなデティールやロボット、世界の描写が分かりやすくも緻密に描かれています。
ストーリーも洋画のSFアクション映画のようで熱いです。
最初のシーンは、「マイケルジャクソン」の「Smooth Criminal」のイントロのような緊張感。
主人公もただ強いだけでなく、葛藤を抱えていて、しっかり文学の要素もあります。
もはや、凄い! しかいう事なし。
SFロボット好きなら、読まなきゃ損! SF最高峰の一つです。
そして、全ての人にお勧めです!
とにかくキャラクターの魅せ方がかっこいいです! 「第二章 自然要塞都市ファル・ハルゼ」まで拝読した範囲となりますが、この物語は公女ロクサーナとM.O.V.ブリガンダイン=ヴァージルによるバディものと思います。
「第一章〈始まりの章〉少女とM.O.V.」では、「序章 宇宙の波」にも書かれていた惑星テクトリウスの廃鉱で何やらきな臭い雰囲気から始まるのですが、それもそのはず。敵方の麻薬密売人の視点で物語が始まっているのです。取引相手として現れた客人――それが公女ロクサーナでした。ロクサーナは麻薬密売人組織の捜査のために取引相手を装っていたのであり、うまく相手の信用を得て潜入すると大立ち回りを繰り広げます。
それだけでは終わりません。M.O.V.という聞きなれない単語。なんと人が乗って操縦する巨大ロボのことで、ロクサーナはM.O.V.乗りで、戦況を一変するほどの戦力を持っていたのです。麻薬密売人は、M.O.V.に乗っていなければただの人と冷静に言い放ちますが、それでもロクサーナはレイピアを振りかざし麻薬密売人組織を翻弄します。
しかし多勢に無勢。ロクサーナを追い詰める麻薬密売人でした。そこに現れたのが紫紺の人型M.O.V.ブリガンダイン=ヴァージルだったのです。ブリガンダイン=ヴァージルの力もあり、麻薬密売人は抵抗を諦めて投降することになりました。
一連の流れはまるで映像作品の一幕を見ているような見事さがありました。
このM.O.V.ブリガンダイン=ヴァージル。ただの巨大ロボではなく、ロクサーナと会話もでき、サポートするだけではなく冗談も言えるようなお茶目な面もあります。また、クロちゃんという芋虫型のかわいい?メカも随伴しており、ロクサーナの周りを彩るキャラクターも万全の布陣といったところです。
巨大ロボに搭載されたイケメンAIと、パイロットの少女のバディ感&カップリングが見所の本格SFです。
この巨大ロボに搭載されたイケメンAIを一言で言うなれば、
ナイトライダーの『K.I.T.T.』やフルメタルパニックの『アル』的な感じなんですね。
人間っぽさよりも、機械っぽさ、AIっぽさが強調されたキャラになっております。
そんなロボと少女が活躍するのは、太陽系外に植民する時代になった遙か未来。
とある辺境惑星です。
そこはまだまだ開拓が進んでおらず、銃器すら貴重品という産業のレベルもあまり高くありません。
ロボも完全に自作はできず、一部の基幹パーツはたま~~~に地球からやってくる貿易船から手に入れるしかないので、やはり超貴重品な世界観です。
そんな惑星で、少女は犯罪者を取り締まる荒事専門の捜査官をやってるわけですね。
相棒はそう、巨大ロボのブリガンダイン。その制御AIであるヴァージルです。
時に捜査現場が修羅場と化せば、少女とヴァージルは軽妙な掛け合いを見せながら、大立ち回りを演じる。
このヴァージルがめちゃくちゃ良いキャラ(AI)でして。
たまに機械なりにパイロットの少女を気遣うような発言をがんばってしてきたりして、その不器用さや辿々しさがかわいいんですよね。このAI。
本来は兵器の制御プログラムでしかないので、人を気遣うような言動は想定された機能じゃないのに、有り余る演算能力で、対人コミュニケーションをがんばってくるみたいな、けなげさを感じちゃうんですよ。
といっても、もちろん、ロボットに本物の人格があるわけではなく、プログラムされたとおりに行動し、喋ってるだけ。
そこは本格SFなのでちゃんと分かるように描かれるわけなのですが。
だけど少女を守ろうとして行動するAIには、人は確かにイケメンさを感じてしまうわけですね。
ただのプログラムに従った行動に、『御姫様を守ろうとする白馬の王子様』という人格をみてしまう。そんな数々の演出が醍醐味です。
パイロットの少女もそれを分かっていながらも、ロボを一人の人格として扱って、まるで相棒か恋人のように接するのが面白い。
こんな方にオススメ
:無機質なAIと主人公のバディものが大好き。
:リアリティ重視のロボものSFが好き。
:作り込まれたSF世界観にどっぷり浸かりたい。
SF小説と聞くと、設定が小難しくて読み難いというイメージを持っている人も少なからず居ると思われますが、この作品は設定が凝っているにも関わらず、読み進めるうちにすんなりと頭に入ってくるので、自然体で楽しむことができます。
心ならずも波瀾万丈の運命を歩むことになった主人公のロクサーナは、正義感が強く腕も立ちますが、未熟な部分も多くて、少々危なっかしい存在です。しかし、それを支える頼もしい相棒が存在し、ふたり(?)の掛け合いは、この作品の見所の一つです。
そんな二人にマスコット的なキャラクターを加えた一行が力を合わせて数々の厄介ごとに立ち向かっていくのですが、この作品の面白いところは、その障害となるキャラクターたち――善人はもちろん、悪人にも、彼女たちに劣らぬ魅力があるところです。道を踏み外した者たちも、どのような経緯によって、そうなったのかを考えると、なかなかに興味深いものです。
世界の描写も秀逸で、国家や都市には様々な特色があって、飽きることがありません。
彼女たちの冒険は、まだ道半ばですが、次はどんな冒険が待っているのかと、今から楽しみでなりません。
第一章まで拝読させていただきました。
そして、自律型AIのヴァージルさんに一目惚れしました。
ヒロインのロクサーナさんにヴァージルがかける言葉が、たまらなくイイんです。私のイケオジセンサーがビリビリ反応しています。
世界設定が骨太で、男子の心をくすぐる武器とロボとシステムが満載。
当然、未知の単語もわんさか出てくるわけですが、【M.O.V.〈ムーブ〉】や、【惑星テクトリウス】など、初見ですんなり頭に入ってきて、残りやすい言葉ばかりなことに驚きました。音のセンスにとても優れた作者様なのだなと、尊敬いたします。
ロボとかメカとかは、ちょっと難しくて……と遠慮しがちな女子も、ちょっと待った!
ロクサーナさんの、戦士として凛々しく戦う姿、家族を想って弱気になる少女の顔、ヴァージルとの軽妙な掛け合いと深い信頼は、きっと乙女の心も鷲掴みにすること間違いなしですので、ぜひ。
故郷を追われ、他の惑星に住む氏族の元に身を寄せる女性主人公ロクサーナと、彼女が起動させる人型ロボット、ブリガンダイン=ヴァージルの奮闘記です。
ロクサーナは王女でありながら凄腕の戦士、更には凄腕パイロットでもありまして、冒頭から盗賊相手に大立ち回りを見せます。
そう、この作品にはロボが出るのです!(超重要)
作者様の、ロボを含むSFへの知識と解釈が素晴らしいです。
ロボの機構、武装、設計思想、出来ること出来ないことがきちんと描写されています。
書き手が少なくなったと言われて久しいSF小説ですが、居るところには居るんだなあと、嬉しい気持ちのなりました。
少なからず工学的、軍事的知識が必要なジャンルですからねえ……。
私も読むのは好きなのですが、書けと言われると10行保たずにお手上げになります。
設定や世界観はもちろんのこと、キャラクターも皆しっかりしています。
強くて美しいロクサーナ、彼女は女性ながらも騎士の一人として、剣を取り操縦桿を握り、前線で怯まず戦います。
時には崖から落ちる子供を助けて、自らが落下することも。
真っ直ぐで正義感溢れるその生き方は、少年漫画雑誌に出てくる主人公のようです。
そして相棒たるヴァージル。彼はロクサーナの乗る人型機動兵器のAIなのです。
口調こそ機械らしい(?)ものの、その戦術や読み合いは人間を遥かに凌駕します。
AIではあるものの、主人であるロクサーナへの忠誠心は折り紙付き。
主を侮蔑する敵へは、機械らしく冷静に、けれども人間のように熱い怒りを持って立ち塞がります。
カクヨムでSF小説をお探しの方がいましたら、是非とも手に取って頂きたい作品です。
SFと中世的世界観のファンタジーが入り混じった世界が舞台。
惑星ザルドの太守トリスタン・カイレンの娘、公女ロクサーナは宇宙海賊に襲われ、相棒であるM.O.V.〈ムーブ〉ブリガンダイン、ヴァージルと共に別の惑星へと逃げ延びます。
ヴァージルはなんとロボットに搭載されたAIで、彼がもうロクサーナを守る騎士のように格好良く、そしてイケボ。
健気なマスコットロボットも可愛くて、キャラ萌えもさることながら、練りに練られた設定・ストーリーに舌を巻きます。
公女は上流階級の育ちですので、辺境の地でさまざまな壁にぶち当たります。そして、ロボットでの戦闘だけでなく、ロクサーナは自ら剣も振るいます。
下品なゴロツキをボッコボコにする場面は爽快です。
ぜひおすすめしたい作品です。
ひとこと紹介が、とてもひとことでは済まないほど魅力に溢れているのがこちらの作品です。
難しさゆえかカクヨムでは珍しい本格派SFファンタジーでありながら、しっかり恋愛も戦闘も体験させてくださる、一度で何度も美味しい素敵な物語です。
まず、ワクワク。
公女ロクサーナがM.O.V.「ブリガンダイン」を操って見せてくれる鮮烈な戦闘は必見ですし、彼女自身も身体能力が高く、細剣で舞うように美しく戦う姿もまた見どころがあります。
丁寧な展開でお話が進んでいくので没入でき、戦闘シーン以外の見せ場にも富んでいます。
次に、ドキドキ。
非の打ちどころのないヒロインロクサーナのお相手は、なんとAI!?
こちらはまだまだ気持ちが芽生え始めたところなので、これからの歩みが気になるといったところですが、だからこそ抱く感情に説得力があります。
「好き」に理由が欲しい方も満足できる展開だと思います。私がそういうタイプです。笑
人とAIの間の恋愛の行く末はどうなるのか。これから先近い将来、現実でも起こるかもしれない恋である点も、興味をくすぐられる理由なのかも。
最後に、なるほど。
書き手の保紫さんはしっかりと知識を蓄えられてから執筆をされる方で、今回SFに挑戦しておられますが、その設定の細やかさと来たら舌を巻くほど。
SFの肝とも言える部分が大変丁寧に作られているので、SFファンの方にもお楽しみいただけること間違いなしです。
他にも「ほのぼの」もありますし(クロちゃんことかわいい?ペットも登場しますし、日常回もあります)、とにかく魅力がたくさんのこちらの作品、ぜひ読んでいただきたい一作です!
拙い筆でしたが、どうか一人でも多くの方のよい出会いのきっかけとなりますように。
読んで勝手に思い浮かべたのは、超進化した、リボ〇の騎士×ナイ〇ライダー!
(若人は、古典をひもといてね)
サファイアのような剣士の姫が、巨大ロボットにも乗って…。しかもそのロボットは、キットのような自律会話系。これは、相棒という枠なんか飛び越える間柄に…?
と、要素満載の様相。
きっとこれは、自分の「好き」がつめこまれた逸品。しかし決して自己満足ではなく、きちんと積み上げられた「好き」世界を描き出す絶品。
作品世界は、剣とロボットというあまり聞かない感じの設定。
だけど、これがまた読ませる!
ちゃんと筋が通っていて、そうなるべくして出来た世界だと思わせ、ムジュンもヒヤクもハタンもない。かのように読者を没入させる。
むしろ今までなぜこれがジャンルとして一般化していなかったのか。
高らかに宣言しましょう。この世界設定は、本作によってすでに「中世ファンタジー風味ロボットアクションSF」(なんじゃそりゃ)の一ジャンルとして見事に確立された!
みなさんも、読んで確かめてください。そして楽しんでください。まさに当ジャンルの最高峰を!!
実力派の作者によって、丁寧に構築された物語が読みたいという人に自信を持って推薦する。美少女・イケボ・癒しのペットの三点セットが大活躍。常はファンタジーしか読まないという方にも、どうか一度読んでいただきたい作品だ。
古のSFファンとしては寂しいことに過疎気味のSFジャンル。しかし、元来SFはファンタジーと親和性が高いものだ。
実は滅びた超高度文明の上に成り立つファンタジー世界や、はるばる恒星間航行を経て到達した地は、限られた資源や過酷な環境を要因として、様々な文化を育み営んでいるといった物語は世に数多ある。
必要上ジャンル分けしてあるだけで、ファンタジーとSFの区切りは想像以上に曖昧なのだ。
さて、本作は文明と歴史の狭間で、苛烈な現実も抱える辺境の星を舞台としている。
そこを舞台に精緻かつ生き生きとした筆致で描かれる、高貴な出自の美少女ロクサーナの活劇。彼女が駆るは、機体美を誇るM.O.V.ブリガンダイン!(強いが万能ではない)
もうこの時点でありがとうございます作者様である。
さらには搭載されたクールなスパダリAIヴァージルのイケボが響き、癒しのぷよぷよ芋虫ロボ、クロちゃんまでもが八面六臂の大活躍を見せる。
さあ、こんな駄文を読んでいないで、どうぞ本編へお進みください!
数多くの素晴らしいレビューに重ねて書くほどのことはもう無いのだが、一つだけ言わせていただきたい
公女ロクサーナという本作品のヒロインはSF史上最強のプリンセスであると
重厚で精密に構築された宇宙観に繰り広げられるヒューマンドラマの本作は、当然美しいものばかりを描写はしない
陰惨な戦争、歪んだ政治、救いがたい社会悪、醜い人間のエゴまでも、クールに余すことなく描かれる
しかし、そこに白百合のように気高く、白薔薇のように麗しく、白鳥のように優美に舞い降り、底知れぬ優しさとぶれない正しさで、自分のことよりもまず民の幸せを第一義に考えるプリンセスが大活躍するのである
惚れない方がどうかしている
相棒M.O.V.ブリガンダイン=ヴァージルとの掛け合いがまたとてつもなくいい
仲間たちに囲まれ、プリンセスとしての矜恃にすっくと頭をあげるロクサーナのなんと生き生きしてかっこいいことよ‼️
この奇跡の美少女をカクヨムに降臨させた作者氏に最大限の敬意を表したい
惑星の治安を守る捜査官であるヒロインと、そのヒロインが乗るロボットが活躍する物語。
一言で説明するとそうなるのだけれど、このロボットに搭載されているAIが実に人間くさい。元々は遺跡に眠っていたのをヒロインが見つけ、ロボットに搭載したのが出会い。
遺跡、AIと聞くと暴走だの、民族間の紛争だの、血なまぐさい物語を連想してしまうのだけど、本作のAIはとても親しみやすく、ヒロインとのコミカルな掛け合いも見どころの一つとなっている。
そして彼らを主軸に、魅力的な登場人物が脇を固め、ハートフルな物語を展開してくれる。
SFロボットものに期待される夢、希望といった要素も満載の本作、ぜひぜひ、ご一読あれ!
SFらしい静かでありながら壮大さを感じさせる導入から始まる物語です!
機体モノ特有の専用色の設定と異名は、SF/ファンタジー好き問わず胸を昂らせる響きでした!
個人的に武器や異名等々のルビ振りがお洒落で、物語上紹介だけであるはずの描写が胸をうつスパイスに感じられました!
1章がまさにこの作品がどのようなものかをインパクトと共にお届けする内容となっていますが、ここで語るよりもぜひ読んでみるべきです!
進行のノイズにならないよう緩急を巧みに織り交ぜた人物と世界観の広がりに1章だけでは我慢できなくなること請け合いです!
現在まだ3章、話数にすれば20話ちょっとです!
ぜひともこの機体を操る公女の物語にみなさんも飛び込んでみてはいかがでしょうか!
本レビューではネタバレなしにするため、敢えて本編のあらすじには触れないようにする。だから今回紹介するのは浪漫要素である。なのに長文なのは勘弁願いたい。
さて、SFに壮大な舞台は必要ない。宇宙の一惑星や一地方でも十分だ―――と言うのは多くのSF作品に触れてきた諸兄ならば頷いてくれることだと思う。
本作も大宇宙に広がる文明圏が設定的にありながらも舞台となっているのは辺境惑星の一地方。雰囲気的には中世のような空気を漂わせながらも、部分部分で進んでいる文明のお陰か電子決済と金銀の通貨がごっちゃになっていたり、SFものではありがちな電子ドラックもありそうなのにナマモノ麻薬がまだ幅を効かせていたりとチグハグな様子。
それもそのはず、恒星間移動は実現できたけど特性上不安定で人類がろくすっぽ制御できないから通信や貿易が難しく、気軽に文明の均一化が出来ないから入植した星々が独立独歩してしまった―――と言う設定があるのだ。
そんな中で一際目立つ特異点がM.O.V.という人型機動兵器―――つまりロボである。
この時点で興味をそそられたSFオタにはもう何も語ることはない。こんなチンケなレビューなど早々に閉じて本編へと進むが良い。主人公機は当然、量産機や四脚ロボが君を待っている。
ではまだこのレビューを見ている諸兄にはA.Iを語ろう。本作にはSFにありがちなA.Iが出てくる。しかも昨今の萌えに寄せたライトオタ向けではない。古式ゆかしいナイ◯ライダーやサイバー◯ォーミュラやフル◯タル・パニックに出てくるような冷静且つイケメンなA.Iだ。健気なマスコットもいるぞ。安心して本編へ赴くが良い。
そしてまだこんなレビューを見ている踏ん切りのつかないヤツ。そうだ、貴様だ。鉄と硝煙だけでは物足りないと宣う欲張りな貴様だ。全く、強欲なヤツだ。必要だと宣うのだろう?女の子が!美少女成分が足りないと………!
安心するが良い。この作品の作者様はそんな醜態を晒すような間抜けではない。隙無くちゃーんと用意しているぞ。喜べ!しかも主人公だ!!
この物語は、公女ロクサーナが相棒二人と巨大ロボを引っ提げて惑星テクトリウスを舞台に大暴れする―――そんな作品だ。
ロボ、A.I、美少女―――この3つの内どれかに惹かれたのなら、一読することをお薦めする。きっとそこには諸兄の琴線に触れる浪漫要素があることを、私の経験から保証しよう。
作り込まれた世界観、しっかりとしたSFの要素、リアリティーのあるメカ…M.O.Vの描写、人情味溢れる登場人物達。
これら全てが作者様の繊細な表現力によって描かれていて、一つ一つのシーンが瑞々しく目に浮かぶようです。
主人公ロクサーナをはじめとした登場人物達が、この別惑星テクトリウスで確かに生きているんだなという生き生きとした描写には、本当に勇気付けられます。
「頑張れ!」と応援したくなるようなキャラクター達、ロクサーナとM.O.V.ブリガンダイン=ヴァージル(バリトンボイスなイケメンAI)のお姫様と騎士のようなキュンとする関係、私も愛してやまない『クロちゃん』という虫型メカ…
魅力的な物語と登場人物達が織り成すこの『ウェーブ&ムーブ〈惑星テクトリウスの異邦人〉』、ぜひ一度お読みになって頂きたいです。
精緻な文章と凝った世界観に、必ずや魅了されるに違いありません。
主人公のロクサーナは公女でありながら、巨大ロボットM.O.Vをかっこよく操り、冷静に状況判断しながら問題解決へ導く、素晴らしい能力を兼ね揃えた方です(時折り見られる繊細な彼女も魅了的です)。
そんな彼女の相棒であるヴァージル(M.O.V)は、AIでありながら人の気持ちを敏感に察知し、思いやる心を持っています。そして、ロクサーナに掛ける言葉や反応にときめく要素もあり、そこには相棒以上の温かい情があります……SFだけではない魅力が、宝石のように第一章からたくさん詰まっています!
また、保紫さまが書かれる描写は非常に分かりやすく、SFやロボットのお話に馴染みが少ない方でも楽しめる構成になっています。そしてお話がテンポ良く進むため、読み始めたら続きが気になること間違いなしです……!
ロクサーナやヴァージル以外にも、クロちゃんという、少し奇妙で愛くるしいキャラクターも登場します(鳴き声がまたとても可愛いんですよ……!)。そして敵として登場する人物も、ただ敵として登場するだけではない魅力があり、とてもよく考えられている物語です。ぜひともこの壮大な魅力を、一緒に味わいましょう!