歯車の公倍数

 不本意な成り行き、不本意な展開、不本意な進行。それと分かっていても、歯車同士の間に巻き込まれたかのごとく抜けられない。自力で抜けられるものならとうにそうしているだろう。ある意味で、良くも悪くも自力を出し尽くしたあとにこそ本来の意味で運命が定まる。

 本作は、そこで悪い方に極まった人々に対する審判であり救済である。一人一人の抱える事情が手に取るように伝わる一方、主人公がどうなるかは最後にならないとわからない。そのとき読者は、主人公の立場にいるのか進行役の立場にいるのか。

 必読本作。

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