伝説と歴史の境目の時代。……とはいえ、青春時代のイタさは変わらない?!

本作の登場人物の活躍した時代は紀元前六世紀。

これは中華の歴史において「春秋時代」
殷周革命(太公望が活躍する『封神演義』の時代!)の紀元前千年代なかばと、統一秦の時代(『キングダム』!)の紀元前二百年代とのふんわりまんなかあたり……
こう「伝説の彼方の時代」と「歴史叙述の時代」の中間地点にあたるんじゃないかと思う。
孔子さまが「怪力乱心を語らず」なんて嘯く時代ももう目の前ですが、『山海経』に出てくる饕餮やら開明獣やらが実際にいると信じられていた時代でもある。

そんな時代、軍事超大国の晋、ある意味君主より羽振りのいい大夫の後継者や若き当主といえばそりゃもう、

☑教養豊か
☑礼節を弁えている
☑気前よく些事には拘らない
☑軍事にもよく通じている
☑過去の歴史から学ぶことにも余念がない
☑祖先を敬い、祭祀も欠かさない
☑容姿端麗
(上記のチェックマークは嘘じゃないです。みなさまお読みになれば分かります)

まさに雲上人。完璧……なはず……

だいぶ霊感体質、果断といえば聞こえは良いけど雑な性格とも相まってとりあえずやっかいごとを引き寄せる主人公と、年齢順で彼の教導を受けてるってだけで迷惑が雨のように降りかかってくるのを努力と根性でなんとかしようとする後輩、ふたりのブロマンス(?)バディオカルトコメディ。

青春時代のイタさは二千六百年前でも変わらない!(かもしれない)

そして主人公の力業によって戦車で轢いたが如くに事件が解決していったあと、不意に訪れる淡い喪失感漂うエピソード……これもまた、まさに青春時代と申せましょう。

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