古い因習は、どこまで人を縛るのか。

この作者様。シリアスからコメディまで幅広く書かれるのですが、今回はとってもシリアス。

とある集落に住む罪人の子、ケセドは、とある理由から、竜へ捧げる供物となってしまいます。
供物なんて冗談じゃない。そもそも竜なんて見たこともないのに、そんなもののために命を落とせるか。なんて言えたらいいのですが、この集落ではそんなこと、口が裂けても言えません。

皆さんはどうでしょう。昔からの風習ということで、誰かが死ぬというのを良しとできますか?
おそらくほとんどの人ができないと答えるだろうと思いますが、そんな価値観の違いこそ、本作の重要ポイント。
たとえバカげていると思っても、自分がそれを変える勇気は無い。そんな経験、あなたにもありませんか?

古い習慣、それを変えることへの抵抗、破った時の周りの目、生まれ持った使命。様々な人が違う価値観を持ち、そのせいで苦しい思いをすることもあれば、反発や仲違いだってある。
そんな悩みと葛藤の果てに、ケセドはいったいどんな道を選ぶのか。
彼の決断を、どうか見届けてください。

その他のおすすめレビュー

無月兄さんの他のおすすめレビュー3,140