龍の嘶きに導かれ

三つ年上の彼氏に振られ、傷心中の私は、一人で公園にやってきた。
すると、どこからともなく聞こえてくる笛の音。
龍笛という雅楽で使う笛を練習していた男性は、荒み切った私の心に安らぎを与えてくれた。
楽器に息が吹き込まれると、一枚の葉が舞い落ちて湖面に生じた波紋のように、音が勢いよくブワーッと広がっていく。
龍笛を吹く男性は、公園で少しだけ話をした私のことを覚えているだろうか。
名前が分からないから、私はあの男性のことを《公園の君(きみ)》と呼ぶことにしよう。