ページをめくって読み耽りたい、静謐で麗しいファンタジー。

休日に布団を被ったまま、あるいはあえて、喧騒の満ちるカフェでコーヒーを片手に読んでもいいかもしれない。
とにかく、スマホやパソコンでは足りない。

主人公のセラやトニヤ、彼らを取り巻くキャラクターたちの語る言葉には重みがある。これはたぶん、地の文に対して会話文が極端に少ないからなんだろう。
それゆえに、心にすんなりと沁みいってくる。先を読めば読むほど、物語が進むほど、彼らの言葉の重みが増してくる。一言一言に彼らの感情が乗っている。たしかに伝わってくる。決して僕の気のせいではないはず(笑)

情景描写や心理描写に関しましては、その叙情豊かな文章に、ただただ圧倒されます。事細かに描かれていますが、それでいて文章のリズム、テンポがいいので非常に読みやすくなっています。
作者様の練り上げられた描写は、半強制的にセラたちの世界へと連れていってくれます。

だからこの物語は、展開が遅いのがいいんです。ファンタジーとして静謐で、ゆっくりと真実へ向かっていくのが面白い。
読んでいるときの時間の流れがゆっくりに感じる。

切実に、文庫として読みたいと思わされたファンタジー小説。
まだ読んでおられない方、ぜひおすすめです。

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