第48話

 ある、夏の日。

 マーガレットは自室の窓に肘かけて外を見る。

 蒸し暑い日ばかりが続いていたけれど、今日は風があって、眠気を誘われるほどに心地良い。

 そのままの心地に身を預けようとした、その時


「マーガレット」


 と、部屋を覗いたお母さんの声で一瞬にして眠気の向こうから戻される。


「なあに?」


 振り返ると、おめかしして、恋した顔のお母さんがいる。


「お母さん、お父さんと出掛けてくるからね」

「はいはい、いってらっしゃい」


 邪魔しませんよ。と嫌味も付け足すと、お母さんは足取り軽く玄関へと向かっていった。

 マーガレットの部屋まで、車のエンジンが掛かる音が響いて、暫くすると視界の端に赤い丸みのある車が通り過ぎていった。

 

 家の中には一人だけ。マーガレットは静寂の中、ベッドの上に置かれたツギハギだらけの猫の人形を手に取る。

 今も、マーガレットは人形に命を与える事が出来る。

 けれど、ニルと名付けたその人形にだけは、命を吹き込む事は無い。


 それは、きっとニルでは無い別の誰かだから。

 サラサラと流れる風の音を聞きながら、マーガレットは人形を腕に抱きベッドに横になると目を閉じた。

 夜の国を冒険した日々を思い出しながら、マーガレットは今日も夢を見る。


 


 これで、小さなマギーの物語はお終い。

 もし、お話が続くとしたら、それはマーガレットが魔女として活躍する話……かもしれない。


 終わり

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小さなマギーの物語 @Hi-ragi_000

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