救いの願いはくらげのかたち。ひかりあふれるひとなつの、純愛ストーリー。

 将来の夢というものを見つけられず、日々を憂鬱に過ごしていた高校生の響は、駅のホームで電車に飛び込もうとしていた少女を思わず助けた。
 初対面のはずの彼女はなぜか響を見て涙をこぼし、不思議な言葉を呟いて、微笑んだのだった――。

 出会いのワンシーンがとても丁寧に美しく描かれていて、運命的な始まりを予感させます。物語の軸になるのは主人公の響と、重い秘密を抱えて生きる海月、響の友人である拓馬と静香。高校生らしくきらきら輝く四人の夏休みに、美しくも切ない叙情をのせて、物語は描かれてゆきます。
 淡い水彩画、あるいはパステル調に描かれたアニメーション映画、そんな印象を受ける繊細な描写が随所に散りばめられており、スルスルと読み進めてしまう魅力ある作品です。

 物語を通して描かれる『救い』のありかたと、それを象徴づける『くらげ』。
 彼女らの選んだ道は賛否両論あるかもしれませんが、若い感性の願う救いとして理解できるようにも思うのです。ラストの手記によって、また少年少女が経た日々によって、救いのかたちが人それぞれであると痛感させられるからかもしれません。

 思いきって手を差し伸べることにより、色づく未来もあるのかもしれないと、私はそんなことを思いました。
 完結作品ですので、ぜひご一読ください。

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