06ページ目 魔導書 VS 一角熊
行くぜ!!まずは
『……え?ちょ…!無理だよ!まだ情報ゼロじゃん!!』
あ…そうだった。
一角熊の強靭な爪が振り下ろされる。
「グオオオ!!!」
「やばい!ミスった!」
しかし一角熊の爪は寸前の所で止まった。
「え?」
一角熊の手に大きな砂の塊がくっついていた。
一角熊は砂のついた手をブンブンと振り回している。
「早速危ないところだったな。俺が代わりにやろうか?」
クリットが砂を生み出し一角熊の周りに漂わせる。
「ありがとうクリット。もう少しだけやらしてくれないか?」
「何か試したい事があるんだろ?思う存分やってみろよ」
「ありがとう」
一角熊の周りにあった砂が消える。
標的を砂の塊から目の前にいるグリムに戻る。
グリムの手の甲には群青色に輝く雷が覆っている。
先手は取られたけど先手必勝!!
グリムはまだ少し混乱している一角熊の腹部に一発、正拳突きを喰らわす。
バン!!凄まじい威力。
その後に少しの雷鳴が鳴り響く。
「ガッ!グォォ」
正拳突きの衝撃で一角熊は後ろに下がる。
『情報取得 10%』
なんて威力なんだ…ただの正拳突きで熊をよろめかす事が出来るなんて。
今がチャンスだ!
グリムは後ろに下がった一角熊とは反対に一歩前に進み飛ぶ!
そして空中で回転し一角熊の横腹を蹴る!
「グオオオオ!!」
一角熊が蹴った方向に飛ばされる。
雷鳴が散乱する!蒼き雷が辺りに響く。
『情報取得! 30%!!順調だよ!』
よしこのまま押すぞ!
しかし一角熊は体制を立て直す。
獰猛な熊は森の歴戦の猛者であった。
そしてこの謎の光を使う奴を自分の強敵と認めた。
森の猛者は体制を低くし重心を下に下に足に出来るだけ自分の体重と力を乗せる。
筋肉が膨張し血管が浮かび上がる。
そして切り裂く音ともに一角熊は走った。
初速のスピードはおよそ時速100キロ。
グリムは迫り来るダンプカーの様に感じた。
そして1つの強靭なツノその鋭利なツノがグリムの心臓を狙う。
クリットは自分の考えの甘さに苦虫を噛み殺す様な顔をした。
転生して間もない男に一角熊の退治を1人で任せるなんて……俺の砂は自分の体から生み出してから操る為、一角熊の突進を防ぐ事は出来ない!!
しかしグリムは焦らずその巨体が迫るギリギリまで動かなかった。
ジータ……あの熊が俺に当たるまで後どのぐらい?
『あと6秒…いや4秒!』
4……3……2!!
グリムは一角熊の顎を蹴り上げた!!
一角熊は自身が出したスピードが仇となり文字通り空中に投げ出された!!
「なっ……まさかあの段階で避けもせずに反撃するなんて……」
クリットは彼の驚くべき行動に度肝を抜かす。
生身の身体なら足が折れてる……いやその前に少しでも遅れたら突き刺されてもおかしくない!!
『無茶するなー!大丈夫?』
俺は蹴り上げた方の足を動かす。
平気みたいだ。
『あそこで蹴るなんてね』
あの状態で防御なんてしても無駄だし回避するとしても間に合わないよ。だったら一か八か反撃するしかなかっただけだよ。
『情報取得 50%…まあでももう勝ちかな?』
一角熊は仰向けになったまま動かない。
「ふぅーーーとりあえず終わったか。
『じゃあまたね』
ジータが魔法図書館に帰って行く。
「おい!無事なのか?」
クリットが砂を足場にして俺の元に向かって来た。
「大丈夫だったよ。何ともない」
「にしてもいい蹴りだったな。少しでも躊躇してたらあそこまでの威力は出ないんじゃないか?それにそのユニークスキルもいい力を出すな」
クリットは1人でうんうんと頷く。
「初めて使ったけど俺もまさかあんなに威力が出るなんて思わなかった」
俺は手の平を見る。真ん中がすっぽり抜けた円が青色に回り続けていた。
そしてその回転に合わせて雷が発生していた。
俺は
回転は止まり雷が消えそして完全に回転が止まると円も消えていった。
俺とクリットは倒れた一角熊の様子を見に行く。
「しかし見る限りだが雷によるダメージはないようだったな」
一角熊の向かう道中でポツリとクリットが呟く。
「そうなんだあれは……」
俺はジータとの魔法図書館での会話を思い出す。
「いい?
「合ってるわよジータ。でも雷の技がないわけじゃないけどね」
「え?そうなのか?」
俺は魔法図書館での
「ふむふむ。相手の情報を抜き出すか。確かに強いが
「ああそうなんだ。一対多数だと結構、不利な能力だと俺も思う」
そうだから俺向けの能力なんだ。
俺は前世では格闘技をやっていたから一対一の戦いには慣れてる。(試合には出てないが…)
でも確かに大勢の敵が襲ってきたら使いずらい能力なのは確かだな。でも
一角熊は仰向けに倒れたまま動かなかった。
クリットが砂でつついてもびくともしない。
「これで1週間は食料が持つぞ。今日は熊鍋にしようかな」
「食べたばっかりじゃないか」
「新鮮なうちに食べたいだろ?」
クリットは砂を生成し素早く一角熊の心臓を突いた。
しかし一角熊の反応はなかった。
「血抜きをしないとな。まあ俺の能力があれば簡単に終わるけど」
「結構、暗くなってきたな」
俺は空を見上げる。
さっきの茜色が嘘みたいに暗くなり空は後小1時間で完全な闇に染まるだろう。
「あのーここで何してるんですか?」
突然、聞き慣れない女性の声が聞こえる。
俺とクリットは一角熊が現れた方向を見る。
そこには黒のスーツの団体がいた。
その先頭には1人だけ黒のコートを腕を通さず肩に羽織っている女性がいた。
その女性はその全身の黒のコーデには異質な長い紫色の髪の毛を垂らしていた。
「まずいな」
クリットが黒スーツの団体を見て嫌な顔をする。
「あれ誰なの?」
黒スーツの団体が近づいてくる。
「あのーすいません?聞こえてます?」
紫髪の女性がまた声をかける。
さっきの声の主は彼女だったのか。
「あ、すいません聞こえてます!」
俺は返事をする。
「クリット?どうしたの?」
「あれは"
クリットは余程、会いたくなかったのだろう。
いやする事すら忘れる程、焦っているのを彼の額の汗から予想できる。
「こんにちは。いやもうこんばんはか。もう一度聞きます。ここで何をしているのですか?」
紫髪の女性はニッコリと笑った。
しかし目は笑っていなかった。
目は俺ら2人を見たまま離さない。
俺も何故か緊張で心臓の鼓動が速くなった。
この人達は只者ではない。
そう俺の今はない細胞が叫んでいた。
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