03ページ目 "電脳の知恵"と"魔法司書" (3)
「じゃあ何て送る?」
「そうだなーシンプルに助けてください!とか?」
「あと自分の姿形も伝えた方がいいんじゃないでしょうか?」
「じゃあ助けてください!俺は魔導書です!でどう?」
自分で何言ってるかわからないけどこれで多分いいんだよな?
「うんいいんじゃない?じゃあやってみるね」
ジータは目を閉じた。
「送ったよ。でも誰に届いてるか分からないしそもそも誰にも届いてないかもしれないけど…」
目を開けたジータは少し悲しそうな顔をした。
「じゃあ定期的に送ってみようよ。誰かに届くまで」
それからジータと俺は何回も
「あーダメかー」
「まあまだ始めたばっかだし送り続ければいつかは誰かが気づいてくれるよ」
「そうだなーまあ気長に待つか」
ジータはまた芝生に寝っ転がりながら
今までベンチに座り続けていたラムダが1つの提案をしてきた。
「そろそろ坂木さんの名前を決めませんか?」
「名前?」
「坂木尊人と言うのは前世の名前であってこの異世界では違う名前を名乗った方がいいと思うんです。それにまだこの世界の事は分かりませんけど私達の名前がジータやラムダなので坂木尊人だと転生者だという事がバレるかもしれません」
んーそういうものなのか?
でも転生者ってバレたらダメなのか?
俺はそのまま今思った事をラムダに返した。
「何も分からない以上、迂闊にこちら側の情報を相手に開示するのは危険だと思います。それにせっかく新しい世界で生まれ変わったのですから心機一転、何もかも変わってみると言うのはどうでしょうか?」
うん確かにラムダの言う通りだな。
こっちは今、何も分からない状態だしこの世界で転生者がどういう扱いをされているのかそもそも俺以外にも転生者がいるかどうか分からないしな。
それに生まれ変わったなら坂木尊人の人生は終わったんだもんな。
心機一転……か。うん悪くない。この異世界に相応しい新しい名前が欲しい!
「うんそうですね。でも自分の名前を自分で考えるのもなんかなー」
ラムダが腕を少し振る。
「実はジータと私で考えた名前があるんです!」
ジータも
「そうそうその名前はねー」
ラムダが慌てて止める。
「ちょっと待ってよ。私が言おうとしてたのに」
「えーいいじゃん」
「嫌よ。じゃあ一緒に言うのはどう?」
「うんいいよ。じゃあいくよその名前は、せーの」
ラムダとジータが息を合わせて俺がこの異世界で生きてく中で一生使い続ける名を口にした。
「「"グリム"!!」」
グリム……その名が俺の心に水面を立てる。
そのまま水面は揺れ心を震わす。
「グリム…いいな。グリム。うん気に入った」
「
ジータは腕を組んでドヤ顔をした。
「気に入ってもらえたならよかったです!これからは貴方のことをグリムと呼びますね!」
「よろしくね!グリム!」
「うん!改めてよろしく」
坂木尊人の人生は突然、幕を閉じた。
悲しみに浸るまもなく目まぐるしく何もかも変わって自分の常識が全て変わった。
それに慣れる時間すらもなくここまで来た。
でもラムダに会ってジータに会ってユニークスキルを教えてもらって名前をつけてもらった。
坂木尊人の人生は幕を閉じた。
だけど
グリムの人生はそれと同時に幕を開けた。
燦々と光り輝く空と世界そしてそれに照らされた俺とジータとラムダそして魔法図書館……ここから何もかもが始まっていく。
ジータはまた熱心に
「さっきから目を覚ましませんね」
ラムダがジータの顔を覗き込む。
「眠ったみたいですね」
「えいえい」
ラムダがジータの頬っぺたをつつく。
「眠っちゃったみたいですね。起こしますか?」
俺は首を横に振る。
「いやいいですよ。俺そんなに急いでここから出ようと思ってませんから」
その言葉にラムダは首を傾げた。
「どうしてですか?」
「……ずっと忙しくてこうやって木が揺れる音を聞いたり陽の光を浴びながらぼんやりしたりこの何もしなくていい時間が妙に恋しくていつぶりだろうなって」
「…」
ラムダは静かに俺の声に耳を傾ける。
「それで外の世界に出たらきっとまた忙しくなると思うんです。俺この世界のこと何も知らないしきっと忙しくなる。だったらもう少しゆっくりしてたいなってそう思ったんです」
ラムダはゆっくりとグリムの言葉にうなづいた。
彼が今までどんな事をして何を感じたか。
それを彼女は知っている。
そしてずっと仕事に追われて身を削って働いていたことも……
ここは彼にとっての心の休まる所であり続けたいとラムダは強く思った。
「……もし外の世界に出て忙しくなってもまたここに戻ってきていいんですよ?忙しくて限界だって思ったらこうやってベンチに座って私とお話しましょ?ここは貴方にとってずっとずーと心休まる所にしますから」
「ありがとうラムダ」
ラムダは微笑んだ。
「やっと敬語やめてくれましたね。もうジータとは仲良さそうにして私ちょっとだけ嫉妬してたんですよ?ちょっとだけ」
ラムダは少し頬を膨らませた。
「ごめんごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。俺はラムダとも仲良くしたいと思ってるよ」
「私も仲良くしたいと思ってます!なんせ私達は一心同体ですからね!」
ラムダは眼鏡をあげた。
そして俺とラムダは前世のこと西条先輩のことを話した。
「そういえばラムダとジータはいつ頃、起きたの?」
「うーん難しいですね。ずっと昔な気もしますしつい最近な気もします。でもジータと会ってグリムの名前を考えるぐらいは時間がありましたね」
「本人達も分からないのか……ジータもラムダも人間なの?」
ラムダは少し考えた。
「うーん多分、違うと思います。眠ったりご飯を食べたりする事は出来ると思うのですが空腹を感じることはないんですよね。睡眠はしたい時にする感じですけどしなくても別に人体に害はありません。でも怪我はしますよ」
そう言ってラムダは指先を俺に見せた。
「これ本の紙で切ってしまったんです。なので人間とスキルの狭間なんじゃないでしょうか?」
「難しいね。怪我はするけどお腹は空かないでも食べれるし眠れる」
「この精神世界には私達以外の生物がいないんですよ。なので食事をするにしてもその食料がないので空腹を感じないようになったんだと思うんです」
そういうことか。確かに俺も長い間、話してるけどお腹は全く空かないな。
それは空腹を感じるとこの世界にいたく無くなるからなのか?
ここは俺にとって安らぎの場所にする為に俺が無意識にそうさせたのかもしれないな。
「俺も全くお腹が空かないからラムダが言ってること合ってると思う」
「あ!眠っちゃった」
ジータが目を覚ました。
「もう少し寝ててもいいのよ?」
「あれなんかラムダ嬉しそう」
そこから俺は魔法図書館を案内してもらった。
広くて綺麗な所だけど本がない図書館はやっぱり寂しげだ。
俺達は最後に屋上に上がった。
屋上から見る景色は全くの白だった。
厳密に言えば白に少しピンク?の模様が渦巻いてる感じだろうか。
「うーんいい景色!とは言えないねー」
「そうだな。全く同じ模様があるだけだし」
「でもいい天気ですしここでお昼寝も気持ち良さそう」
すると突然だった。
何か持たれている感触があった。
俺は身体を探る。
しかし何も触っている者はいなかった。
なんだ?誰が触っているんだ?
「どうしたの?」
ジータが異変に気づいた。
「いやなんか触られてる気がして」
するとラムダが声をあげた。
「もしかして!誰か拾ってくれたのでは!?」
「ジータ!」
「うん!"
ジータは少し目をつぶると俺に合図した。
「いいよ。今喋ったら聞こえるはずだよ」
『あの誰かいるんですか?いたら返事してください』
「うお!」
いきなり落下する感覚を味わった。
『ほ、本が喋ったのか!?』
その声は老爺のものだった。
グリムの
※公開可能なスキルのみ。
【"
魔法図書館 : グリムの精神世界にある図書館、彼が手に入れた書物を保管する。またスクリーンでグリムの視覚を見ることもできる。
魔法司書 ラムダ : 魔法図書館の司書でここにある全ての書物の内容を記憶している。また貸し出しや管理など魔法図書館の仕事、全てを受け持つ。
寄付 : 書物の所有者に本を譲ってもらうことができる。
【"
電脳の知恵 ジータ :
【"女神"】
スキル不明
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