02ページ目 "電脳の知恵"と"魔法司書" (2)
魔法図書館に天気の乱れはない。
いつも少しの雲をそよ風がゆっくりゆっくり動かしていく。
動かされた雲は何処に行くのか……それは誰も分からない。
永遠に閉ざす事ない陽の光が魔法図書館の一室を照らす。
「アタシのユニークスキルは多彩なんだけどね?今は使えるのほぼないんだよねー」
「え…そうなのか」
「だからー今使えるやつだけ教えるよ。全部教えたら面白くないでしょ?」
ジータはそう言ってニヤリと笑った。
「ダメよ!ちゃんと教えてあげなきゃ!坂木さんのユニークスキルなんだから!」
「俺も全部、知りたい」
「えーわかったよ」
ジータは少しだけ考えて何から話すが決めていた。
完全な沈黙にそよ風に揺られて新緑の木が身体を揺らす。
その音に俺はジータが話し始めるまで心奪われていた。
こんなにゆっくりしたのいつぶりだろうか…
会社の激務に追われて木々のざわめきに心揺らすことなんて今までなかった。
何も分からないがこの2人だけが今の俺の命綱だ。
とにかくここで生活するにしてもこの異世界の仕組みそして俺の力……
西条先輩もこの世界に居てくれないだろうか。
俺は淡い期待を抱いた。
「まあ〜そうだねとりあえずはアタシのこと言わないと始まらないか」
ジータの声で俺は物思いから覚める。
「アタシは"電脳の知恵"なんだ!
電脳の知恵って言うのは今から使う色んな能力を尊人の代わりにアタシが使ってサポートするみたいな感じ」
「でも俺が使った方が早くないか?そんなに難しいのか?」
「そこはご安心ください!まずは"
「"
「……じゃあ仮に俺が外の世界を見れた時はジータとラムダは見れないってこと?」
「いえそう言うわけではありませんよ」
「そうそうじゃあまずはそこを説明しよう!」
ジータは俺の手を引いて扉に向かう。
「あ、ちょっと」
ラムダも後に続く。
扉を開くと長い廊下が伸びていて向かい側にも扉があった。
ジータに連れられて右の方に向かうと丸い円のようなところがあって真ん中に花が置かれてあった。
そこから更に右に行くと階段があった。
その階段を下がると……
「うわぁすげえ!!」
そこは大きなロビーになっていた。
たくさんの空っぽの本棚が寂しげに置かれてた。
上を見上げると吹き抜けになっており3階まで空間が広がっていた。
2階には本の貸し出しカウンターがあり大きな掛け時計もあった。
「本来はここに映る貴方の視点を見ます」
俺は後ろを振り向くとそこには映画みたいに大きなスクリーンが浮いていた。
「今は何もないけどね」
スクリーンは闇を映している。
スクリーンの後ろには今まで見た中で1番大きい2枚の扉がそこにあった。
「ここでラムダとアタシは尊人が見てるものを映像として見るの。でも
「へぇーそういうことか。それで何も言わなくても理解して能力使ってくれるわけね?」
「そゆこと…あ!ここでは使えないから注意ね!」
「わかった」
俺は魔法図書館を眺める。
「それにしてもすごい所だな!」
「ここは貴方が作ったんですよ」
「あ、そうか」
「でもやっぱり本は全くないですね」
「これから集まればいいんですよ」
「確かに……そうですね」
でも出れないんじゃないか?という言葉は声には出さなかった。外に出る方法を探す為に今、情報を集めている最中だからだ。
「まだ能力はあるよ!」
ジータは何も写さないスクリーンの下にいた。
「今使えるのはねー"
"
俺は首を縦に動かす。
これはメールみたいなもんだな。
「これの応用で"
「うんうん」
「これは尊人がいた世界でもあったよね」
「これは理解しやすいな。スマホとか無しでメールみたいな機能が使えるって感じか」
「そうゆうこと」
「それで次が"
「これは完全に電話だね」
「えーとこれで今使える能力は以上です」
「え?もう?」
まじか!もっとあると思ったけど……
いやでも全然、勝算はある。
単純に
「それでここからは尊人が外の世界から何かしらの方法で出れた時に使える能力の説明ね」
「まずは……………」
ジータはラムダに所々助けてもらいながら説明し終えた。
「これは……俺にピッタリだな。それに強い!でも全部、覚えれるか覚えれたとしてもちゃんと使えるかどうか」
「そういう時は
「ジータに任せればいいのか!」
「そゆこと!おまかせあれ!」
俺とジータは顔を見合わせて笑い合った。
「ちょっと外に出ていい?」
「うん!出よ出よ」
俺は重そうな2枚の扉を開ける。
見た目に反してすんなりと扉を開いた。
気持ちいい風が頬を撫でる。
気温も暑くもない寒くもないちょうどいい温度で欠伸が出てくる。
地面は広い芝生が敷いてあった。
その芝生は突然、崖によって遮断されていた。
その崖は今まで見たものとは異質で自分を隔離する明確な境界線だった。
申し訳程度にある薄い階段を3歩降りて窓から見た木に向かう為に左の大きな広場のような所に向かった。
その広場には花壇があり色んな花が植えてあった。
見たことあるが名前は思い出せなかった。
木の根本から少し離れた所に木製のベンチがあった。
俺はそこに腰掛ける。
大きく息を吸った。濃い酸素の匂いがした。
「それで3つ目のユニークスキルは?」
するとジータとラムダが目を見合わせる。
「それが……」
「分からないんです」
「分からない?」
「はい。私は【"
「じゃあ名前は?」
「名は
「……女神…」
まさかあの金髪の彼女が?
「でもでも本来はユニークスキルはそういうもんなんだよ。他の人達は生まれた時からあってそれを理解しながら強くしていくみたいな?」
「ジータとラムダがいるのは特別なんだ」
「ユニークスキルによりますがおそらく……」
ジータは芝生に横になった。
「んーいい天気!眠くなってきた」
ジータは芝生の上でゴロゴロし始めた。
「それでユニークスキルには更なる段階があるみたいなんです」
ラムダはそんなジータを見て微笑む。
「まだ上があるんですか?」
「はいそれが"
「"
まだ外の世界も見てない俺からしたら夢のまた夢かもな。
俺もベンチから降りて芝生の上に横になった。
陽の光に照らされた芝生は心地よかった。
ラムダは空いたベンチに腰を下ろした。
本当に眠くなってくるな。
ダメだダメだ。とにかく
「ジータ!」
俺は起き上がりあぐらをかいた。
「ん?なに?」
ジータも上半身だけ起こした。
「
「わかんないけど誰かいれば声は聞こえるはずだよ」
「よし!じゃあやってみよう!」
転生して右も左も分からないけどジータとラムダがいれば大丈夫な気がしていた。
もし出れなくても楽しく暮らせるかもしれない。
それと同時に
安閑と焦り相反する2つの気持ちが坂木尊人の心を埋めていた。
空は周りの空間と違って晴天の青空が広がっていた。
静かに巡る雲と風、今見える全てが坂木尊人の心を癒していた。
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