01ページ目 "電脳の知恵"と"魔法司書"
陽の光が当たって俺は目を覚ました。
目を擦りながら起き上がると俺は沢山の本棚がある部屋のソファに横になっていた。
本棚は空っぽだった。
ずいぶんと長く寝ていた気する。
服は会社にいた時と同じ皺が目立つシャツとズボンを履いていた。
昨日?いや寝る前?それも違うな転生前?
そうだな転生前の記憶が蘇ってきた。
金髪の女性おそらく女神が異世界転生さしてくれて……
そうだ!異世界!
俺はソファから立ち上がり陽の光が照らす窓に向かった。
そこには何もなかった。
ただの白い空間が広がっていた。
下を覗くと芝生があり新緑の木が大きな影を作っている。
そして芝生からいきなり途切れるように崖になっていた。
窓を開けて顔を出した。
建物の上には雲が所々にあり太陽はなかった。
じゃあ何でこんなに明るいんだ?
それでここはどこだ?
扉が開く音がして振り向く。
「目が覚めましたか?」
茶色の髪を垂らして大きな丸眼鏡を掛けた女性が立っていた。
「あなたは?」
「私はラムダと申します。ここ魔法図書館の司書をやっています。以後よろしくお願いいたします。」
そう言ってラムダは深くお辞儀した。
「あ、えーと俺は坂木尊人です。よろしくお願いします」
俺もお辞儀を返した。
ラムダはクスリと笑った。
「ええ存じております。何せ私を作ったのは貴方なんですから」
え?俺が彼女を作った?
それに魔法図書館?
変な神殿に来たと思ったら次は図書館……頭が混乱してくる。
「1つずつ教えていきますね」
俺の混乱を察知してラムダは優しく言った。
「ああはいよろしくお願いします」
「その前にもう1人、紹介しなければいけません」
ラムダは扉を少し開けて決してうるさくないがよく通る声で呼んだ。
「ジータ!」
「はい!はい!今行く!」
ドンドンドンと慌しく階段を登る音がして扉が開いた。
ピンク色の髪の毛をボブカットにした女性が現れた。
ラムダの顔の系統が綺麗であるのに対してジータと呼ばれた彼女は可愛い系であった。
フリフリしたスカートを履いていた。
「おおやっと起きたか」
彼女は近寄って手を差し出した。
「アタシはジータ!よろしくね!」
「あ、ああよろしく」
俺はジータが差し出した手を握った。
「自己紹介も終わった事だし私が知り得る範囲で今の現状を伝えますね」
ラムダはソファに腰を下ろした。
俺も今まで寝ていたソファに腰を下ろす。
まだ自分の体温で暖かい。
ジータも俺の横に座った。
「まずは貴方が所持している特異技能……ユニークスキルから話しましょう」
「特異技能?ユニークスキル?」
「ええ特異技能の事をユニークスキルと呼びます。
ユニークスキルは貴方が転生した時に元々持っている特別なスキルの事です。
貴方が所持しているユニークスキルは3つあります」
ラムダは指を3本立てる。
「1つは【"
「このユニークスキルの概要はまずここ"魔法図書館"を作り出す事が出来ます。
この魔法図書館は貴方の中にある建物で貴方が手に入れた書物をここで保管する事ができまた誰かに貸し出したりする事もできます」
「俺の中?」
「そうです。えーとですね実はここは厳密に言うと異世界では無いんですよね」
「どうゆう事ですか?」
「ここは貴方の中に作られた建物なんです。身体の中にあると言えばいいんでしょうか?精神世界ですかね。でも実際に現物はあるそんなような所です」
「まあ何となく分かりましたけどじゃあどうやってここから出ればいいんですか?」
するとラムダは口を結んだ。
「尊人はこの世界だと人間じゃないんだよ」
ジータがラムダを代弁して答えた。
「どうゆうこと?」
「えーとね尊人は本なの
「……え?でも俺はこうして身体もあるし人間そのものじゃないか?」
「ここは尊人の精神世界なの!だから尊人が自分だと思う姿形になってるわけ本来はこのぐらいの魔導書」
ジータは脇を締めて長さを教えた。
B5のノートぐらいの大きさか……
でもその話が本当だとすると俺はここから出られなくないか?
「じゃあ俺はずっとここで暮らすの?」
「どうなるか分かりませんが今のところはそうですね」
ラムダが答える。
俺は顔を上げた。
綺麗に磨き上げられている天井が目に入る。
とりあえず話を聞こう。
まずは自分ができる事を知ろう。
「それでそのユニークスキルの能力は終わりですか?」
俺はラムダに向き直る。
ラムダは首を横に振った。
「まだあります。次にこの私です」
ラムダは自分を指差した。
「私はこの魔法図書館を管理、そして貴方が手に入れた書物の手入れやその書物の内容を記憶したり出来ます」
「つまり俺が読まなくてもいいってことですか?」
「そういう事です」
よかった……俺、本読めないからな。
「次に"
ラムダは胸ポケットにしまってあった。
ボールペンを取り出して俺に渡した。
「まず
俺はボールペンを握って本にしたいと念じた。
するとボールペンが本に変わった!!
「おお!すげぇ!」
「これが
俺は手にしている本を見る。
表紙には俺が本にしたボールペンの写真と名前が書いてある。
「
俺はボールペンの本を戻したいと念じた。
するとボールペンが元の姿に戻る。
「で、出来た!」
ラムダは胸の下で小さく拍手した。
「これが
俺はラムダにボールペンを返す。
「最後に書物を手に入れる方法を教えます。大きく分けて3つあります」
またラムダは指を3本上げた。
「1つは自分で購入する事です。
2つ目は今みたいに
そして3つ目が寄付してもらうことです」
「寄付?」
「はい所有者に書物を譲ってもらうことですね。そうすると自動的に魔法図書館の本棚に収納されます。収納された書物は全て私が記憶していますので知りたい事が有れば私におっしゃってください」
「アタシでもいいんだよ?」
ジータはソファから降りるとラムダと俺の中央に立った。
「次はアタシだね!」
「まだありました!まだ!」
ラムダも立ち上がる。
「これは貴方のユニークスキルには含まれていませんけど一応…説明します」
「えーそうゆうのは後でいいじゃん」
ジータは不服そうだ。
「俺は聞きたいな。何ですか?」
「貴方の前世の記憶や今からの記憶を保管する書物があるんですよ。"追憶の書"と言う名前の魔導書です」
「そんな物もあるんですか?」
「ええそれでこの書物……私とジータ見てもいいですか?
と言うかもう見てしまってるんですよ…すいません!」
ラムダは頭を下げた。
俺の恥ずかしい過去の黒歴史とか全部、見られたのか?
最悪だーー!!
「ごめんなさい」
ジータも続けて頭を下げる。
しょうがないか……新しく生きてく為だし過去の事は忘れよう。
「ま、まあいいですよ。でも!絶対、人に言わないで下さいね」
「格闘技やってたけど1回も試合出てないとか?」
ジータが茶化した。
「うぐっ!」
「コラ!ジータ!」
ジータはゲラゲラ笑い出した。
「うそ!うそ!ごめんなさい!もうやらないよ」
「俺の心臓が持たないからやめてね」
俺は急に縮こまった心臓を少し抑える。
あーー!!いやだー!!!
本当に全部、知られてるかも!!
「まあアタシ達は一心同体だからさ。
そして次はお待ちかね!!【"
落ち着け俺、落ち着くんだ。
気づかないフリだ気づかないフリ。
よし大丈夫だ。よーし平気。
「お願いします!!」
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