賭けるのは、「存在」。己の存在を糧に戦う。

大きな仕事なのに、仕事をした人の存在が認知されないことってありますよね。例えばイルミネーションの配線とか。
でもこれらは仕事人同士はお互いの存在を認識できますし、イルミネーションを見た人は「ああ、こんな素敵な仕事をした人がいるんだ」と想像することができます。

しかし本作の代人というヒーローは違います。彼らの力は「存在」。存在を対価に力を得て、その力で戦います。
力の使いすぎは文字通りの「消滅」を意味します。誰からも存在さえ忘れられる。親にも兄弟にも恋人にも、そんな人間はじめからいなかった、誕生していなかったかのように扱われる。

対する敵は「存在を喰う」荒魂という化け物。こいつに喰われた人間は存在がなくなります。先程と同じように、家族からも友達からも恋人からも、存在そのものがデリートされる。
そう、主人公たちは己の存在を賭けて他人の存在を守る英雄なのです。

代人の由美は荒魂を狩り続ける女子高生。そんな彼女の前に、突出した才能を持った少年が現れて……? というところから物語は始まります。

本作はバトルパートのみだけではありません。
日常パートもあります。
友達とはしゃいだり、恋したり、学校で日常を送るシーンがあります。
しかし戦って「存在」を失うと、そうした思い出さえ一切なかったことになります。日常パートがバトルパートに緊迫感を持たせているのです。

やがて出会う、強大な敵。
「存在」を賭けた戦い。
でも大丈夫。あなたは忘れないから。

しかとその目に、焼きつけてください。

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