第11話 退治
11.退治 × 置手紙
「ねぇねぇ、連絡先知っているんでしょ? 教えて、教えて」
クワンは勢い込んでそう尋ねてくる。アイドルとの知り合い、つてを頼って連絡先を知る、というパターンか?
適当にあしらっておくことにする。両性具有であることを知らないようで、どうして一緒にお風呂に入っていたのか? そんな細かい疑問、諸々をすっ飛ばしているので、その点は助かってはいるが……。
しかし、リダウたちに目をつけられた。素人冒険者が、特Aクラスの鬼、サワラと出会って無傷、無事であることと同様、その細かい事情を教えようとしない点も、敵意につながっているのだろう。
「サワラと出会っても、何もできないよ。誰も……」とだけ語っていても、何も解決するわけではない。
しかしサワラがそうであるように、神がいるから鬼がいる。鬼がいない、死を恐れない世界となったら、神など不要となる。鬼の存在が、世界の歪みであるなら、神もそうなのだ。
ボクもそれを理解しつつあった。でも、どうすればいいか? なんて分かるはずもなかった。
鬼は退治しないといけない。次の日から、ふつうに鬼退治にもどった。鬼が不幸により生まれてしまうものなら、幸福感を与えてあげないといけない。だから、ボクたちは戦うのだ。
「いや~ッ! こっち来ないで~ッ‼」
「助けてポ~ッ! ガクッ」
「クルックは何で仰向けにひっくり返っちゃうのよ!」
戦う……初心者ばかりのこのパーティーでは、少し強い鬼と出遭っただけで、バラバラとなる。
魔法剣士になりたいクワンは、剣を抜くことすら忘れて逃げ回っているし、クルックは仰向けにひっくり返った拍子に気絶してしまう。魔術師……といっていたけれど、彼女の魔法は一回も見たこと……見せたことがなかった。キキリはそんなクルックを助けようとするけれど、自分も逃げるのに精いっぱいで、クルックまで手が回らない。
今回は緑の袴を穿く、緑鬼。彼女のつかう魔法は植物だ。蔓が伸びて……といったことはないけれど、森の中にいるので、木の根が地表にあらわれ、暴れて足に絡みついてくる。それに捕まったら、拘束されて終わりだ。
こういうとき、ボクの盗人スキルが役に立つ。相手にみつからないよう抜き足差し足で近づく。
ただ、襲いかかろうとすると、彼女の周りを木の根が囲んで、攻撃をかわしてしまう。剰え、彼女はその場から姿を消し、別なところに現れる。どうやら根を通じて、地下を移動できるようなのだ。
中々に厄介な敵である。
でも、これで生まれたてというのだから、このまますくすくと育ったら、とんでもない鬼に育つだろう。
だからこそ、ここで退治しないといけない。
「クルックは火属性の魔法をつかえないか?」
キキリに抱えられ、逃げているクルックは「無理ポ~。うちの魔法は、何がでるか分からないポ~」と応じる。
「ビックリ箱かよ⁉ 何でもいい。とにかく敵を惹きつけてくれ」
「知らないポよ~」
そういうと、クルックは何かの魔法を唱える。聞いたこともない詠唱で「山の神、風の神、水の神……」と、すべての精霊に語り掛け、どれか一つでも言うことを聞いてくれたら……というほど頼りないものだ。
「誰か私に、力を貸して!」
そういって、杖を掲げた。すると、雨が降ってきた。
「雨なんか降らせたら、木が元気に……熱ッ!」
雨粒かと思ったら、熱湯だ。どういう作用でそうなったのか? 水の神と、火の神がタックを組んだ? 分からないけれど、意図しない魔法なので、クルックも「熱、熱ッ!」と逃げ回っている。
しかし緑鬼には覿面だった。
みるみる衰えていって、力をなくしてしまう。
暑さ、寒さなどの変化に弱い植物もいるぐらい、気候の変動に植物は弱い側面がある。それが熱湯をかけられたのだから、弱ってしまったのだ。
倒れてぐたっとなっている緑鬼に近づく。直垂はびしょびしょで、それが彼女にまとわりつき、ちょっとエロい。とにかく倒すだけでは、鬼を退治したことにならないので、ボクは彼女の服を脱がしにかかった。
目が覚めると、また逃げられる可能性があって、ボクもできれば早くつながりたいと考えた。
袴を下ろすと、下半身を中心に責めることにした。手と、舌をつかって内腿を丹念に責めていく。内腿には神経が多く、女性に限らずここは敏感なところだ。眠っているので反応はないけれど、そこを刺激し、敏感にしておいて、口はそのまま彼女の両足の間、その中心部に狙いを定める。
内腿を責めていたためか、すでにとろりと湿り気があり、ボクの舌も滑らかにその周辺から、湿り気を舐めとるようにすすむ。
「う、うぅん……」
時間をかけ過ぎたか? 目覚める前に決めないといけない。本番は下手くそ……と言われるけれど、つながっておくのが肝要だ。ボクは彼女の中へと、起きないよう優しく、ゆっくりと挿入した。
腰はつかわず、彼女の中へと納まったまま、それ以外の個所を優しく愛撫する。そうした指使い、舌使いは上手いのだから、腰使いより、しっかりと幸福感を与えられるとの算段だ。
実際、彼女もすでにつながっていることを気にする風もない。見た目は幼く、幼女にみえるけれど、サワラがそうだったように、それはまるで経験があるような感じでもあった。
鬼としては比較的大きな胸を両手で愛撫し、たっぷりと唾液が交じり合うぐらい、舌を絡ませていると、緑鬼は「ふぅ~……」と、吐息のようなものをついて消えていった。
「ホント、前戯だけは上手いわよね、アナタ……」
キキリは嫌味っぽくそういう。ただここ最近、この辺りの鬼が少なくなっていて、必死だったことも前戯にかけた一因だった。
「それにしても、クルックの魔法は何あれ?」
クワンに尋ねられ、クルックも「分かんないけど、昔からこうやって魔法をつかっているポ」
今回は偶々、瓢箪から駒になったけれど、つかいにくい魔法だ。
「特大の魔法がでると、その後しばらく動けなくなるポ……」
自分で制御もできていない。切り札にもならず、つかうときは破れかぶれのときだけ、という情けなさだ。
もっとも、魔法剣士を自認しながら、未だに魔法どころか、剣士としての活躍もしていないクワンが「危なっかしいねぇ~。アハハ……」なんて笑っているのも、何となく情けない。
宿にもどってくると、手紙が残されていた。
リダウからで、その手紙を読んで、ボクたちは町をでることにした。何しろ、ここにいる意味を失っていたからだ。
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