第13話 女神

13.女神 × 旅立ち


 女神は美しい……。彼女が生みだしたのだろう鬼がそうであるように、むしろ鬼という対極をうみだすことで、自分をより高めると考えてつくったのなら、鬼は醜く、恐ろしいものとすべきだった。

 でも、彼女の美的感覚がそれを赦さなかったのだろう。

 神の存在が、鬼を生んでしまうものなら、その鬼をさらに自分の信仰へと利用しようとした。その鬼が可愛い子であることが、彼女のセンスに合った、ということだろう。

 女神の服をゆっくりと脱がす。ただ、鬼に自分のような豊かな胸、くびれた腰、でんと張った臀部といった、セクシュアルな魅力を与えなかったのは、彼女の矜持かもしれない。

「君は、鬼と冒険者とのエッチをみたいわけじゃないんだろ?」

「あら? どうして?」

「冒険者がどれぐらいエッチが上手いか? 上手くなったか? それを確認するためにそういうルールにした。それは、キミがエッチをする、したい相手を選びだすための仕組みだ」


 女神はボクの陰部にふれてきた。鬼は基本、こうして自分から迫ってきたりはしない。自我を強くもったサワラでさえ、自分からアプローチすることはない。キスのとき、自分から舌を絡めてきたり、ということはあるけれど、陰部を手慣れた様子でまさぐってきたりはしなかった。

 ボクも、彼女の胸、陰部を優しく愛撫しながら話をつづけた。

「どうしてサワラが隠れていられるのか? 普段、人に見つからないのか? それを考えたとき、鬼が誕生する仕組みにも気づいた。

 鬼は世界の歪み、怒り、悲しみなどに反応して現れる、とされるけれど、鬼は元々この世界にいるんだ。ただ、ふつうは人間には知覚できないだけ。それが歪みによって人にみられる存在となり、それが嫌で、鬼が人をはじめ、世界に害を与える厄災となるんだ。

 それはいきなりこんな世界に放り出されたら、困惑もするだろう。それをエッチによって隠れることができるようになる。絶頂に達しようとするとき、鬼はそれを思い出すんだ。そういう仕組みをつくった。

 そして本来、鬼はそういう体験を一度すると、二度とこちらの世界の人間には感知できなくなる。でも、時にサワラのようにくり返し鬼となってしまう者もいて、そういう鬼はパワーも格段になっていくし、知恵もつける。彼女と話をして、何となくわかったんだ」

 彼女の手の動きが速くなる。まるで我慢比べ、どちらが先にイクか? 互いの指で相手をイカす。その寝物語のように、ボクは語りつづける。


「自分が利用するため鬼という存在をつくり、そのルールまで決めてきたキミが、何の考えもなしに退治にエッチが必要、なんてルールをつくるわけがない。

 冒険者のリダウがサワラと会いたかったのは、キミに会える権利を得ようとしていたからだ。

 そしてボクが択ばれた……と感じた彼は、町を去っていった。鬼ヶ島へ向かうよう促したのも、そういうことだろう。だからボクはここに来た。君とエッチをするために……」

 彼女も最高のテクでボクをイカそうと、ついに口で銜えてきた。ボクの頭をまたぐようにする、彼女の股にボクも顔をうずめる。

 もう言葉はいらない。周りにいるクワン、キキリ、クルックも目が放せなくなり、ただ茫然とみつめるばかりだ。

 胸を弄っていた手を、ボクも内股、そしてお尻に向けた。彼女はこうしたテクをみても経験値が高いと思われ、もっとハードに責めていこうと思ったのだ。

 それはAV女優の中には素人っぽい子もいれば、経験豊富な子もいる。新しい刺激を求める子に、それを与えるのもボクの仕事だ。

「あぁ、何これ? 何これ⁉ ナニコレ~ッ‼」

 ボクは我慢ができて、相手をイカせる男。女神もボクのテクによって、絶頂を迎えたのだった。


 鬼ヶ島からもどってきたボクたちは、あれからも変わりなく冒険をつづけている。この世界の仕組みが分かったからといって、何かが変わるわけでもない。鬼は誕生しつづけているし、その鬼を退治する術は、少女の姿をとる鬼を気持ちよくさせてあげることだけだ。

 ちょっと変わったことといえば、クワンが魔法少女として訓練をはじめたこと。憧れのリダウと出会うことができても、アイフォムという枝を通じて通信しようとしても、魔力が弱いとそれこそ連絡もできない、と気づいたのだ。

 キキリは三ヶ月経っても、猿族の町にはもどらなかった。まだまだ冒険者として未熟なボクたちを放っておけない、ということだそうだ。でもそうして責任感が芽生えたせいか、文句やお小言が多くなった。

 クルックはクワンと一緒に、魔法の特訓をしている。何が起きるか分からない自分なりの魔法など、使い勝手が悪すぎる。色々な精霊に語り掛けて、何かを起こして、なんて詠唱を改めるよう指導している。


 ボクは? といえば、相変わらず前戯は上手いけれど本番が下手、としてキキリからは怒られる。

 こればかりは経験がものをいう部分もあって、練習中である。

 サワラと会って、女神まで辿りついたけれど、女神をフルに満足させることはできなかった。

 女神からも「まだまだ頑張りなさい」とダメだしを食らった。

 鬼のような可哀想な立場の子たちを、如何に満足して、安寧に元の世界に戻ってもらうか? そのために腕を磨くことを求められた。つまり、ボクは不合格だったのである。女神がこの世界の仕組みを改め、鬼のような存在をつくらなくて済むようになるまで、まだ時間がかかりそうだ。

 それは鬼を退治するのではなく、鬼と対峙し、鬼を大事にすることも意味している。

 ボクはまだまだ、鬼を大事にできていないのかもしれない。

 それはこの世界で、転生者がどうして必要だったのか? という問題にも深くかかわるのかもしれない。別に、この世界にいる人間にそれをさせてもよかったはずなのに、わざわざ転生者を択び、送りこむ必要がないのだから。

 でも、それについてわかるのは、もう少し先のお話。今はとにかく腕を磨き、テクを鍛えて、女神に真実を話してもらえるようになるまで頑張らないといけない。

「ほら、P太郎。もう、下手くそなんだから……」

「ご主人、がんばって」

「頑張るポ~」

 まずは、ボクのお供をしている彼女たちに認めてもらわないと、冒険すらままならなくなりそうだ。

 ボクたちは鬼ヶ島に行った。でも、そこで冒険が終わるわけではない。むしろ、そこからがボクたちの冒険の始まりなのだから……。






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