「想像を超えた主人公」のタグの通り、読むものの予想を超えた創造主という存在が主役である。
彼は神や魔王よりも上位の存在で、魔法など使わずに思うだけで権能を使う。
そんな全能の彼が、ふと自分の作った世界に降り立ち、迷宮を作り、さらには一介の魔王として「新入り魔王歓迎会」に参加するという、非常に興味を引き出される設定である。
一見、難しそうな内容ではあるが、その緻密な設定や世界観、そして主人公である創造主と代行者の会話には丁寧な背景説明の描写が付いているのでわかりやすい工夫がされている。こういう手法があることに驚いた。
読めば読むほどその世界の深淵を覗き見ているかのような気持ちになる物語である。
普遍的な異世界ファンタジーで神や悪魔は頻出します。しかし、それらの作品群で、果たしてどれほどの作品が人間、神、悪魔との関係性を適切に表現できているでしょうか。多くの作品はそうなっていないでしょう。
それはなぜか。人知を超えた存在を人間の視点で語ろうとするからです。この作品は人間、神、悪魔よりも高次の存在、すなわち超越者の視点に立つという全く新しいアプローチで創作された、実験的かつ独創性の高い作品です。
カドカワBOOKSファンタジー長編コンテスト中間選考突破作品であり、品質は保証済み。普遍的な異世界ファンタジーの題材も視点を変えれば、こんなに面白くできるのかと気付きが得られました。
論理的で可読性の高い文体は唯一無二性があります。それによる超越者のたわむれの表現が秀逸であり、ある種の爽快感すら感じることでしょう。
暇を持て余した神様が、自分で作った世界へ、正体隠して潜りこんで遊び回ってたら、大騒動が起きちゃうというお話しです。
神様が暇を持て余すと、ろくなことをし始めないトラブルメーカーのは、世界中の神話あるあるですが、この物語の神様も同じくなんですね。
彼にはやってみたことがありました。
自分で作ったファンタジー世界の魔王となって、ダンジョンを運営し、そこへ探索にきた冒険者たちの活劇を楽しみたいというものです。
そうして、全能の神である正体を隠して魔王になりすまし、その世界へやってきてダンジョンを作るんですが……。
ところが、その世界には魔王と呼ばれる存在が無数にいてですね。
群雄割拠してるわけです。
ダンジョンが一つや二つ新しくできたところで、誰も気づかないんですね。
それが寂しくなっちゃった神様は、全能神たる能力を使って、とんでもない宣伝をやらかすんですが、このせいで魔王業界(魔王はいっぱいいる)が騒然となってしまうんですね。
なんか、この世界にやべえ能力をもったやつがいるようだ、と。
大騒動へ発展してしまい――。
と、そんな暇でお茶目で寂しがり屋の神様が、やりたい放題やらかすお話しでございます。
こんな方におすすめ
:ファンタジー世界でお茶目な神様の神話が作られる過程を見たい方
最新38話まで拝読してのレビューです。
カクヨム中を探しても、このような作品はないのではないでしょうか。
もはやオリジナルワン的な存在になっていると思います。
全てが独特で、世界観は無論のこと、描写力や没入感等、あらゆる面で作者様の独創力が遺憾なく発揮されていると感じられます。
入りの部分はとっつきにくく、抵抗を感じるかもしれません。
それもすぐに慣れてしまいます。
そこから先はもう沼にはまっていくように作品内に入り込んでしまうでしょう。
理路整然としていながら混沌、混沌としていながら理路整然、何とも不思議な作品と呼ぶにふさわしいです。
今までにない作品をカクヨムでお求めの方、本作は本当にお薦めですよ。