「明智先生、大変です!」
ぼくは一冊の本を胸に抱えて、先生の書斎へ飛び込みました。
「どうしたんだい、小林君。怪人二十面相でも現れたのかね?」
「いえ、それよりもっと不思議なんです!」
ぼくは先生に表紙を見せました。
『太初以前から在る者の余暇と遊戯 ~もし人知を超えた存在が新人魔王に扮していたら、あなたはどうしますか?~』
先生はタイトルを一目見ると、静かに頷かれました。
「ずいぶん壮大な事件のようだね」
ぼくも読み始めてみましたが、これはただ強い魔王のお話ではありませんでした。
「太初以前から在る」という、人の理解を超えた存在が世界を眺め、人々と交わる姿は、とても神秘的で、ときには哲学書を読んでいるような気持ちにもなります。
力を見せつけるためではなく、「存在とは何か」「知性とは何か」を読者へ問いかけるような物語で、ページをめくるたびに新しい考えが頭に浮かんできました。
そして何より驚いたのは、作者さんの熱意です。
各話に添えられた解説や設定の説明からは、「この世界をきちんと理解してもらいたい」という真摯な思いがひしひしと伝わってきます。作品世界を支える膨大な思考と考証、その積み重ねは決して片手間で生まれるものではありません。
きっと、この壮大な世界を少しでも多くの読者へ届けたい、そして書籍という形で世に送り出したい――そんな強い願いを持ちながら、一話一話を丁寧に積み重ねてこられたのだろうと感じました。
明智先生は、よく「真実は細部に宿る」とおっしゃいます。
この作品も同じです。
壮大な世界観だけでなく、その裏側にある設定や思想、作者さん自身の思索までも含めて、一つの作品世界を築き上げています。
ぼくにはまだ解けない謎もたくさんあります。
でも、それがかえって「もっと知りたい」という探究心をくすぐるのです。
まるで未知の怪事件を前にしたときのように。
そんな知的好奇心を刺激してくれる、実に読み応えのある一作でした。
本作は、一般的な「異世界もの」や「魔王もの」とは一線を画しており、
ストーリー展開は、人間中心ではなく、さらに高次の全知的な視点から
捉えています。
最大の魅力は、圧倒的な力でチート無双するのではなく、
気まぐれを持つ存在が世界をどう観察し、どう変化させるかを徹底的な設定と
熱量で描いている点です。
この「徹底的な設定」は現代のWEB小説トレンドである、とにかく情報をそぎ落とし
読みやすさを最大限に高める潮流とは、一見すると真逆になりますが、
作者様の筆力により絶妙なバランスへと昇華されてあります。
それにより、他の作品群より抜き出た奥行がありながら、可読性が担保されています。
この異色SFファンタジー、多くの方に、おすすめいたします。
この外的、客観的、脚本ありきのト書きを思わせる、文章の舞台装置は、
舞台の幕が上がるたび、世界そのものが新たに生成されていくような感覚を呼び起こす。
主な登場人物としては、
正体を現さない超越した存在。そして代行者。
超越した理としては、
宇宙の外側、世界の起源そのものが舞台空間に据えられているようだ。
混沌とした 神界、魔界、人界に当てはめてみれば、コズミックサイキックという言葉が自然と浮かび上がる。
精神そのものを開放し、躍動する彼の姿を見たとき、『サイキック』という語を思い浮かべた。
さらに、彼が時空の境界を超え、浮遊するように異世界へ転移していく光景を目にした瞬間、その意識は一気に宇宙的な広がりを帯び『コズミック』という語が自然と立ち上がった。
それは、神界・魔界・人界を包含し、善悪や秩序と混沌の区別が生まれる前の根源的意識で根源的力でもあるように思える。
「コズミック」は宇宙的・根源的な側面、
「サイキック」は精神的・霊的な側面、
を表していて、宇宙的でありながら精神性を帯びた根源的存在への注視を促す。
カミュの『カリギュラ』哲学的戯曲のような、外観上の文章の構造を思わせるが、
ここでの主人公は、太初の神とも悪魔とも区別のつかぬ超越した存在であり、
人間のように思い悩むこともなく、絶対的存在として君臨している。
彼は、興味の赴くままに飄々としていて、
自身の掌握する世界に干渉することに一切の躊躇いがない。
『神とも悪魔とも区別のつかぬ超越した存在』
太初ではないが、日本には、地蔵と閻魔の両方の顔を併せ持つ地蔵信仰がある。
超越者であるならば、一つの顔にこだわる必要はない。
むしろ、己の姿を自由自在に操ることこそが、彼の本質なのだろう。
旅に出ることは、彼自身をいっそう身軽にする。
その上で哲学的な神視点から世界の表面を客観視する。
相乗効果として、劇的でありながらも厳かな表現が際立つのではないかと思う。
この神視線は、作者であると同時に、読者であるあなたの視線でもある。
哲学的小説の登場人物はしばしば、
どのような思考を経て、どのような行動を選び、
どこへ辿り着くのか──
その過程そのものを思考実験として提示する。
あなたはこの物語の中で、
作者、作中の人物、旅する主人公と共に観測者として、
彼の行き先がどのようなものであるかという思考的実験に参加することができる。
彼がどこへ向かうのか──その思考的実験に、あるがままに身を委ねてみれば、
彼の辿り着く先が、あなたの前に姿を現すことでしょう。
壮大なスケールと哲学的なテーマが特徴的な作品だと感じました。特に、神や魔王ですら相対化されるほどの超越者を主人公に据えている点が面白く、一般的な異世界ファンタジーとは明確に差別化されています。
物語の魅力は、Kantinofが善でも悪でもなく、純粋な知的好奇心と退屈しのぎによって世界へ介入しているところです。人類の命運や文明の未来ですら、彼にとっては観察対象や思考実験の一部でしかないという価値観が、独特の不気味さと神秘性を生み出しています。
超越者による神話的シミュレーションを描く哲学ファンタジーという印象でした。世界そのものを実験対象として眺める主人公の視点は非常に独創的です。
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