第5話 視線と死線と鈍感男と鋭感女と


「美月さん!?」


 俺達を見るなり絶叫し、座り込んでしまった美月さんを見て俺は焦り素早く助け起こす。


「南沢さんに彼女……南沢さんに彼女……私がのんびりしてたから……南沢さんに彼女」

「おーい、美月さん?」

「この人が例の美月さんか?」


 小さな声でなにかを呟き目に光を灯していない美月さんを見ながら野田さんが呑気にそう告げる。


「美月さん?」

「南沢さんに彼女……南沢さんに彼女」

「くっ、ダメだ返事がない」

「いや、あるだろ。南沢さんに彼女って呟いてんじゃん」


 隣で野田さんがなにか言っているが美月さんの放心状態に慌てている俺はその声が聞こえない。


「くっ、野田さん美月さんに一体なにをしたんだ」

「いやいやいやいや、なんでそこで私なわけ!? 明らかにアンタに原因があるでしょ。これ」

「指名手配の名は伊達じゃなかったというわけか」

「それアンタ以外呼んでねぇよ!」

「スキル洗脳……なんて恐ろしいんだ」

「恐ろしいのはアンタの脳みそだわ!ってか彼女を助けることが最優先でしょうが!」

「大丈夫だ。もう立ち上がった」

「あ、あれ南沢さん?」


 ようやく意識を取り戻した美月さんを見て俺は安心する。なんとか戻ったみたいだ。


「なんで!? なんで急に直ってんの!?」


 しかし、野田さんはそんな美月さんを見て納得いかないとばかりに首を全力で振る。

 ……直ったんだからいいじゃないか?


「いつものテンションとか見たら直るんじゃないかと思ってな」

「どんな理論!?」

「な、南沢さんがお、女の子連れてるぅぅぅぅぅぅ」


 意識を取り戻したはずの美月さんがまた俺達を見るなり倒れてしまう。


「……」

「……また、倒れちゃったけど?」

「み、美月さぁぁぁぁん!!」


 *


 あの後、店長が来て美月さんと相田さんを落ち着かせるとなんとか2人は意識を取り戻し俺達はようやく席につくことが出来た。


 のだが。


「なぁ……なんか凄い視線感じんだけど?」

「気のせいじゃないか?」

「しかも二方向から」

「……気のせいじゃないか?」

「いや、気のせいじゃないよね!? 明らかにさっきの店員さん達が見てきてんだけど?

 特に美月さん?とかは視線全く隠せてないから! 本人多分隠してるつもりだろうけど一切隠せてないから」


 そう、美月さんと相田さんから何故か視線を感じるのだ。普段はそんなことはないのだが……。


「多分二人とも野田さんが指名手配犯ってことに気づいてるんだ」

「アンタの妄想で勝手に指名手配されてるだけなのになんであの2人までそう思ってんの!? そんなわけないし!」

「じゃあ他になにがあるっていうんだよ」

「それは……私とアンタを彼カノと思ってるとかそういう……」

「うん? なんて?」

「っなんでもない……し」


 急に顔を赤くして小声になったと思ったらいきなりの大声。野田さんは俺の耳に恨みでもあるのだろうか?


「ってかそろそろ注文するか。今日はなんか早く帰った方がいいかも」

「確かに……なんかあの2人以外からも視線を感じるし」


 野田さん……それは当たりだよ。実際俺も感じているし。まぁ、あっちのは視線というより死線だけど。


(なーに女子といちゃいちゃやってんだこらぁ? 彼女いない歴=年齢の俺に喧嘩売ってんのか?)

(お前にゃ美月さんがいると思ってたらハーレムかよ。ふざけんなよなぁ。俺は死ぬほどモテ男が大っ嫌いなんだ)

る。らねばこちらがイチャイチャに当てられられてしまう。悪く思うなよ)


 くっそ、テレパシー使いの常連客どもめ。少し俺が女子と話してるだけでこの有様とは。

 それに野田さんは俺と話に来たんじゃなくて美月さんに会いたいだけだからな。


(((言い訳はあの世で聞こう!!)))


 ハナから聞く気ねぇじゃねえか!!


「ん?どうした?」

「いや、なんでもない。ただちょっと命を狙われてるだけだ」

「そうか」


 野田さんは俺の返事を聞くとメニュー表に目を移して____。


「っていやいやいや。なんで当たり前みたいに言ってんの!? どういう状況!?」

「気にしなくてどーぞ、この店だとよくあることだし」

「こっちが気にするわ! ってかどんな店だよ。急に不安になったわ!」

「まぁ、指名手配犯の野田さんなら上手く馴染めるんじゃないかな?」

「指名手配犯が馴染めるお店なんて嫌すぎるうぅぅ」


 野田さんが少し疲れたようにテーブルに突っ伏してしまったがそれは無視して俺もメニューを決めて呼び出しボタンを押す。


 ……この程度で驚いていたらこの店じゃやってけないぞ、野田さん。


 数秒ほどして俺達の前に姿を現したのは美月さんであった。


「ご、ご、ご、ご注文はお決まりですか?」

「どうしたんですか!?」

「……ついに来たか」


 何故かめちゃくちゃ震えながら……野田さん目を鋭くしないであげて! 何故か今日の美月さん凄い不安そうだから。震えてるから!


「ブラックコーヒー1つとメロンパフェで」

「えっと私は……ブレンドコーヒーで」

「か、かしこまりりりました」

「えっと……これ本当に大丈夫なのか?」


 美月さんのあまりの震えように野田さんが心配をするが大丈夫。……多分。

 そして店長に注文を伝えた美月さんは何故か俺達の所まで来る。


「あ、あのもしかして、お、お2人はお付き合いされていいいるのでしょうか?」


 そしてそんなことを少し顔を赤くし体を震わせて少し涙目で言うのだった。

 はっ?……可愛すぎるんだけど? 女神か! ……女神だったわ。


 ってそうじゃなくてどうしてそんなことを?

 何故か野田さんも顔を真っ赤にしてるし、謎だ。



 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 美月さん野田さんにジャブを繰り出しました。次回 戦況激化? 女の争いが始まる。


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 では!

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