第6話 些細なことがきっかけで事態は反転する


「いや、美月さんそれは____モゴッ」


 美月さんに全く違うということを伝えようとするが俺の口が突如野田さんによって塞がれてしまう。は、早く弁解しないといけないのに。


「……私との関係は友達じゃないですよ?」


 俺の口を塞いでいる野田さんが何故か牽制するような口調で俺のワザワザに握ってそんなことを言う。いや、確かに知り合いで友達とまではいかないかもだけど、その言い方はなんか違う風に聞こえないか?


「と、友達じゃない?」(つまり恋人?)


 なんか美月さんの顔青ざめてるし。


「み、美月さん? 俺とこの野田さんは知り合いというかなんというか……友達レベルじゃないですけどみたいな微妙な感じで」

「そ、そうなんですね。……良かった」

「良かった?」

「い、いえ」


 美月さんが何故か安堵しているようにも見えるが意味はよく分からない。そんな安心するようなところあったけ?


「……もう少し困らせたかったんだけどな」


 そして野田さんは何故か不満そうだ。こっちもこっちでよく分からない。


「じ、じゃあ」


 そして美月さんは今度は何故か慌てて去っていってしまうのだった。


「あぁ、もう少しお話を!」

「……私じゃダメなの?」

「そりゃあ、美月さんと話すためにここに来てるわけだか____いてて!? なにすん____いてて。すみませんよく分かりませんが許してください」


 素直に伝えたのに腕を捻られてしまう。なんで!? なんで頰を膨らませてんの? あれか? 俺みたいな奴は美月さんと話すなってか?


「アンタは本当に美月さん一筋ね」

「悪いか?」

「悪くはないけど……見た感じ希望は薄そうだから諦めた方がいいと思う。そしてちょっとだけ茶髪の発展途上な女の子にした方がいいと思う」

「だからなんなのその特徴的な推しは」


 そして野田さんの目が珍しく泳いでいる。……なにか後ろめたいことでもあるのか?


「とーにかく、アンタはさっさと諦めて次の恋に進むべきだしって話! ……目の前の女の子とか……どうよ?」

「どうってなにが?」

「……アンタねぇ〜」


 怒ったような呆れたような声を出す野田さん。いや、意味が分からないから仕方ないじゃないか!


「まぁ、俺は美月さんを諦める気はないから」

「……そう。なら、私も諦めないし。振り向かせてみせる」

「えっ、なんて?」

「なんも」


 なにかを決心したかのような顔をした野田さんがなにか言ったような気がしたが気のせいだったみたいだ。嘘をついてる可能性もあるけど……別に気にするほどじゃないだろう。


「お待たせしましたー」


 しばらくして俺たちの注文したものが佐伯さえきさんに運ばれて来る。ちなみに佐伯さんは男で俺と非モテ同盟を組んでいる。

 絆はバッチリである。

 ……何故か今日は目から血を流して俺を睨んでたけど。多分、気のせいだな。うん。


「あれ? アンタ甘党じゃなかったっけ? なんでブラックコーヒー?」


 運ばれて来たものを見て野田さんが不思議そうな顔をする。


「確かに俺は甘党だけど……なんで知ってんだ?」

「そ、そそそれは……そう! アンタよく甘そうなもん食ってるから! それで甘党だと思ってたの」(ずっと観察してたなんて言えるか!)

「そうか、別にそんな慌てなくていいことなんだが」

「う、うっさい分かってるし。それより答えてよ。甘党のアンタがなんでブラックコーヒーなんて」

「ふっ、これは海よりも深い訳があるんだよ」

「海よりも?」

「あぁ、大人っぽさを出して美月さんに見直してもらうというだな」

「浅い! 限りなく浅いわ!」


 なんか野田さんが全力でつっこんでいるようにも感じるが無視。


「きっとこれなら美月さんも振り向いてくれる。大人な俺作戦決行だ!____あっにが!」

「……なんか大人って言うより子供がコーヒー飲もうとして頑張ってる微笑ましい感じにしか見えないけど」

「そ、そんなことはない____にがっ。俺はブラックコーヒーをたしなめる大人な男性____にがっ」

「説得力皆無だし。……てか可愛いし」

「美月さん。美月さんの反応はどうだ。野田さん、俺が見たらバレるから教えてくれ。ちょうど見える位置だろう」

「見てすらない」(なんか南沢を見て微笑んでるけど教えない方がいいな。なにもライバルを手助けする必要もないし)

「ノォォォォォォン!!」


 くっそ、効果なしか。……ブラックでカッコいい俺作戦失敗。


「つーか、メロンパフェなんて頼んだら甘党ってバレんだろ」

「あぁ、これは……」

「なんだよ」

「野田さんがメニュー見て目を輝かせてたから……つい。気のせいならゴメン」

「………なにそれ。誰もそんなの頼んでないし」

「だ、だよな」


 気のせいだったみたいだ。まぁ、メロンパフェは俺も好きだし食べるか?


「でも……折角だから食べるよ。……あんがと」

「なんだ結局食べたかったのか」


 野田さんは本当に嬉しそうに微笑んでいた。

 その顔が見れたなら頼んだ甲斐があるってもんだ。


「ち、ち、違うし。折角頼んだのに悪いなって思って」

「分かった。分かった。メロンが好きそれでいいじゃないか」

「ちっがーう!!!!」


 メロン好きな人は多いしそんな隠すようなことではないと思うけど……まぁ、いいや。


「あ、あのぉ」

「み、美月さん?」


 そんなことを野田さんと話しているといつのまにか来ていてた美月さんに話しかけられて声が上ずってしまう。

 そんな俺を見て野田さんは面白くなさそうに鼻をならす。


「なんですかデートのお誘いとかですか?」

「は、はい」

「そうですよね。そんなわけないですよね____えっ!?」


 なんだ? 聞き間違いか?


「い、行ってもいいって言ってるんです」

「はいぃぃぃぃ!?」


 美月さんの思わぬ返答に俺の思考は止まり、俺の絶叫が店内に響き渡るのだった。



 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 ようやく勇気を出した美月さん、次回 更に店内は荒れる? ……いつか店長が禿げそうですね。


 少しでも続きが気になる人は星や応援是非是非お願いします。少し更新速度が上がるかもです。(明日は祝日なんで二話いけるかも)


 では!

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