第2話 悩める美月さん
「はあぁぁぁぁぁぁ〜」
「おうおう、どうした美月よ。ため息なんてついて」
バイトも終わりスタッフルームで私がため息をついていると私と同じくバイト終わりの麗華が声をかけてくる。そして麗華はなにも答えない私をしばらく見つめると。
「なんだ。また、南沢くんのことか」
っとニヤと笑う。うっ、なんで分かるの?
「美月よ。なんで分かるのって顔だな? クールな美月にそんな赤い顔させるのは南沢くんしかいないでしょ?」
「あ、赤くないし!」
「……そうやって素直になれないからいつまで経っても付き合えないのが分からないの? 美月」
呆れたような目を向けてくる麗華。確かにそうだけども! そうだけども!
「いや、本当に好きじゃないから」
「ま〜だ直らないのか。こら」
「いたっ」
麗華に軽くデコピンされ
「な、なにするの?」
「そーんなこと言ってると南沢くん取られちゃうよ? なんか相田さんも狙ってるみたいだし」
「ほ、本当!?」
私は麗華の言葉に慌てて身を乗り出す。
「ちょっ、近いって。……ってかそんなに気にするくらいなら早くオッケーしてあげればいいのに。……正直あんな優良物件他にないよ?」
「ち、違うし」
「今の時代ツンデレは流行んないわよ?」
麗華は呆れたようにため息をつくと、こりゃダメだと言わんばかりに頭をふる。
「今日の南沢くんもかっこよかったわよね?」
「うっ」
「今日の告白……あれ、明らかに美月をあの厄介客から守るためよねぇ。自分が道化をしてまで好きな人のこと守ってるんですもん」
「うぅぅぅぅ」
「一途よねぇ。あんなの他の子が惚れてもおかしくないわよ。私だってあんな風に守ってくれる人がいいし」
ジト目で話しかけてくる麗華に対してなにも言い返せない。
「わ、分かってる」
「いーや、分かってない。それに加えて容姿もよし普段の態度も紳士的とくれば学校でも相当の人気。南沢くんってモテそうよねぇ」
「わ、分かって____」
「実際、あの高宮女子大学の冷華とも言われる相田 美希さんにもアタックされてるしねぇ。……本当にいつか取られるわよ?」
「と、とられるって私のじゃないし」
「いくら南沢くんがあんた一筋でいるとは言ってもとられないとは限らないのよ?」
麗華の冷静な指摘に思わず手が止まる。
「それは……」
「だからさ、好きならさっさとオッケーしなさいって話よ。大体なんで断っちゃうのよ」
「今までの流れ的になんかオッケーするに出来ないし。私は振ってるわけだから本当は私以外に好きな人がいるんじゃないかと」
「……今の美月の様子を南沢くんに見せれば多分泣いて喜ぶわ。というか、あんなに美月に一途なのに他に好きな人なんているわけないでしょ!?」
「南沢さん優しいから私を守る為に告白してるだけかもしれない。毎日通ってるのも、店側に私が客を減らしたと思われない為かもしれないし」
「はあぁ〜南沢くんが本当に可哀想だわ。あんなにど直球にアピールしてるのに。むしろ私が貰っちゃおうかしら」
麗華の怪しい呟きに思わず私は反応してしまう。
「そ、それはダメ!」
「ダメって美月のじゃないんでしょ?」
「で、でも」
「なら、早く勇気を出してオッケーすることね。もしくは美月から告白するとか」
「うぅ、でもオッケーして南沢さんに「いやー、あのー厄介客から守る為の嘘なんですけど」とか言われたら立ち直れないし」
私が不安に思っていることを伝えると麗華はとても哀れみを含んだ目を向けてくる。
「な、なに?」
「いや、告白されてるのにその告白を信じれないって美月の人間不信も中々だなって」
「だって初めて出来た好きな人なの。不安になるのはしょうがないじゃない!」
「……今、思いっきり言ってたわね」
「あっ」
思わず漏れてしまった心の声を麗華に指摘され顔が熱くなっていく。
パシャリ 麗華はスマホを取り出すと私を撮る。
「ちょ、麗華なにを!?」
「いや、美月の珍しい乙女顔だったから。というか顔真っ赤よ? 本当に早く付き合っちゃえばいいのに」
「それが怖いのよ!」
「はいはい、そんなに顔真っ赤にして言われても可愛いだけですよっと」
私の軽いジャブをひょいっと避けた麗華はベェと舌を出す。そして麗華はそのままカバンを持つと歩いていく。
「ともかく早くどうにかすることね。時間は長くないわよ」
「わ、分かってる」
そしてそれだけ言うと去っていってしまった。
麗華が去った後、私は少し今日の事を思い出す。
私を見ると嬉しそうに笑う南沢さん。腕をつかまれて困っていると告白をして振られることによって撃退する南沢さん。
「はぁぁ〜// 本当にどうしたらいいんだろう」
私は誰もいない部屋の中、1人誰に問いかけるわけでもなく呟くのだった。
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次回 主人公は学校で……?
面倒くさいヒロインですがどうかよろしくお願いします。
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では!
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