第13話 水族館


「よ、ようやく入れたわね」

「「「ほぼ麗華さん(ちゃん)のせいだけどね」」」

「私その人知らないけど次会ったら文句言うわ」

「「「死なない程度に頑張って。草葉の陰から応援してる」」」

「私以外死んでんじゃん!? そんなにヤバいの?」

「「「19歳で剣道四段、合気道四段、中学高校と剣道の方で全国優勝。ついたあだ名は武道嬢」」」

「勝ち目が一切ない!!」


 ようやくみんなが落ち着き、水族館に入ることが出来た俺たちは麗華さんについて話していた。

 野田さんがドン引きしてたけど正解、というか本当に化け物すぎるからなあの人。


 もう、そろそろ五段も取るつもりらしい。更にまだ修行期間が足りてないだけで実力的には7段くらいあるらしい。……化け物だ。


「ま、まあそんな化け物麗華さんのことは一旦忘れて、ここ思ってたより大きいんですね?」

「そうなんですよ。ここ見た目より大分中は広くてペンギンさんも沢山いて可愛____いますが特にそれは関係ありません」

「「「そうなんですか(にっこり)」」」

「な、なんですか!?」


 美月さんの発言に俺たちはにっこりと笑う。

 ……隠さなくていいと思うだけどなぁ、可愛いのが好きとか知られたくないのだろうか?

 本人冷静キャラだし。……まぁ、隠せてないけど。


「美月さん?……なんかここの水族館詳しそうだけど何回くらい来たことある?」


 明らかにウキウキしている美月さんを見て野田さんが話しかける。確かにそれは俺も聞きたかったがプライベートに踏み込みすぎかと思って聞けなかったからナイス!


 やはりこういう所は異性より同性のが聞きやすい。ナイスアシスト野田さん。


「えっと……数十回とかそんな感じですね。来すぎて覚えてませんが……」

「そんなに!?」


 確かに思った以上だったな。


「家がここから5分ほどなので近くてペンギンさんも見れ____海の動物! 海の動物達が好きなのでよく来てました」


 なるほど、それでそんなに来てたのか……。確かに美月さんほどのペンギンさん好きで水族館が近くにあるならそれも頷けるのかもしれない。


「家にペンギンさんのぬいぐるみは何個くらいあるんですか?」


 お土産コーナーを通りすぎながら相田さんがのんびりとした口調で美月さんに尋ねる。


「えっと……23……一個!一個です」

「「「多い!!!」」」


 ペンギンさんのぬいぐるみだけでそんだけ持ってるとか相当だな。どうやら俺達が思った以上に美月さんのペンギン好きらしい。


「わ、私のはいいですから相田さんが好きなのとかは?」

「私ですか? 私は……シャチとかですね」


 相田さんが少し間を開けて答える。


「な、なな南沢さんは?」


 俺の名前を呼ぶたび先程のことがフラッシュバックするのか赤い顔で尋ねてくる美月さん。

 すいません、事故でしかないのは分かってるんですが今の表情が俺にとってご褒美すぎる。


「俺は……カメとかですかね」

「そ、そうなんですね」

「んで、私はカバさんかな。可愛いし、強そうだし」

「「「水族館じゃない!!!」」」


 俺と美月さんの微妙な空気を察したのか野田さんが自分の好きな水族館の生物を言い雰囲気を変えようとしてくれたが、いかんせズレていた。


「なんで? カバって水の中泳ぐんじゃ」

「やっ、まぁそうなんだけど水族館にはいないかな」

「あんなに強そうなのに……残念」

「なんか野田さんの常識の欠如より強いのが好き理論の方が問題な気がしてきた」

「強いものは強い」

「脳筋!」

「弱者に構うな!」

杏寿◯きょうじゅろう! ってかそれ敵役のセリフ」

「本当にカバさんはパナいと思うわけなんだけど……多分、人間の1人や2人簡単にやれる」

「なんかもう……いいや」


 ここまで来ると諦めである。気づけば美月さんや相田さんもなにか言おうとして踏み黙っていた。しかし、耐えきれなかったようで美月さんは笑みをこぼす。


 そしてそれを見た俺たちもつられて笑ってしまう。


「というかやっぱり今日はみなさんと来て良かったですね。こんなにも楽しい」

「「「……」」」


 俺は何気なく思ったままに言っただけ……なのだが3人は足を急に止めて黙り込んでしまった。えっ? なに、俺なにか不味いこでも言ったか?


「まぁ、確かに今日は楽しいですね」

「1人で水族館とかだったら無理だけどほぼ初対面なのに楽しいメンバーばっかりだし」

「なんかもう終わりそうな雰囲気になってますけどまだペンギンさんに会ってないですから! 私達の本当の冒険はこれからですから!」

「「「そうですね」」」


 なんか最早隠すことなど忘れてしまっている美月さんも含めて穏やかな顔をした3人がいた。最早、4人なので美月さんと距離を縮めるもなにもないがこんなのも悪くないのかもしれない。


 俺は3人を見ながらそんなことを考える。

 しかし……。突然前の男性が止まってしまいあえなくぶつかってしまう。


 ドンッ!


「す、すいません____って、お前は」

「気をつけろよ____って、お前は」


 簡単にそんな幸せは壊れてしまうものらしい。


「あ、あなたは……」


 美月さんも相手の姿を見て震えだす。そう、目の前に立つ奴は……俺にとっても憎き相手であり美月さんの敵であり、もう二度と会うことはないだろうと思っていたクズであった。



 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 なんかシリアスっぽい感じですがそこはラブコメ全振りの今作、次回はコメディ的展開で普通に解決していよいよラブが本格的に動き出します。


 正直、基本的に面倒なキャラは入れないんですが美月さんと主人公とかの繋がりのために必要なんであえなく入れさせてもらいました。展開は完全なギャグなんでご安心を。


……ってか今気付いたら水族館なのに、水族館の中について全然触れてないな。


 で、では!





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カフェ屋の店員さんに半年間振られ続けてる俺ですが最近振られるまでにためがあるような気がします。あの〜顔を赤くしてどうしたんですか? タカ 536号機 @KATAIESUOKUOK

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