まず作者様の感性が鋭敏で繊細で、そしてそれを、美しい言葉と文章で見事に表現されています。「華族」という永遠に失われてしまった世界への哀愁に、胸が締め付けられる想いです。この舞台設定が好きな方は、まず読んで損は無いと思います。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(218文字)
本作品はあまりにも美しいのです。三人の女性の想いが、儚く哀愁が漂うように描写されています。また、自然の描写や心理描写が巧みに描かれており、読者は新しい欧米的な個人主義と旧態依然の東洋的な全体主義の間で悩まされる旧時代の少女になった気分になれます。そして、主人公の主観的な視点から語られるそれぞれの愛が、読者の心に憂いをもたらします。そんなあまりにも美しい小説です。是非是非、読んでください。
女学生の令嬢達はやがて花の園を出て結婚や遊学へとそれぞれ歩んでいく。見つめる御付きの主人公も夏の霞のような恋を経て。栞を挟んだ人生の一節を想い返す、なんて素敵な大正浪漫。
もっと見る