幼馴染の親友が俺らカップルを助ける為に奮闘する話
第10話 もし、やり直せたら……。
樹君、恵奈、そして私。私達三人は同じアパートで幸せに暮らしていたが、その幸せは長続きしなかった。
恵奈の病気は治ったのだが、今度は樹君の記憶が正常に戻ったかと思えばまたおかしくなるという事を繰り返しだした。
“けーちゃん”がいると樹君を刺激してしまうのだから、私達がいなければ良いのかとも思ったが、本人が離れたがらないのと私達のサポートがなければ生活に支障をきたす事もあり、結局三人での生活は続いていた。
最初、突然自分が何をやっているのか忘れてしまう樹君を見た時などは本当に鳥肌が立った。
この生活にももう、限界が見えてきている。
恵奈と慧……二人の“けーちゃん”がそう感じていたある日……
三人で買い物をしていると、魔法少女のコスプレをした女の子に話しかけられた。
「あなたたち、大分変った人生を歩んでるみたいね? 占ってあげるよ。」
三人とも占いは別に嫌いという事はなかったので、せっかくだからと話にのる。
正直……この生活が破綻してしまうのが目に見えていた私は、占いを信じているわけではないが、解決の糸口にでもならないかと藁にも縋る思いであった。
「元々あった流れが歪んでいるのを感じる。この時計を持っていって。」
魔法少女は何故か私に置時計を渡してきた。
「その時計は時間を戻す魔法の時計。きっと役に立つよ!」
この上なく怪しいけど、なんとなくその時計が助けてくれるような気がした私は、礼を言って三人で帰宅した。
(結局占ってもらってないじゃない。)
時計には現在の年月日が表示され、試しにと前日の日付にしてみる。
(戻るわけないか……。当たり前だよね。)
僅かばかりの期待は裏切られたが、そんなものあるわけないとも思っていた私。
特に何事もなくその日は終わった。
翌日目が覚め、いつものように恵奈と私が朝食の支度をしていると奇妙な違和感を感じる。
「ねえ。昨日もパンだったから今日は違うのにしない?」
「昨日は焼き魚だったよ。忘れちゃったの?」
それは一昨日の話。昨日は確かにパンを食べた記憶が私にはある。
「今日の日付は?」
「7月18日だけど……。」
「今日って三人で買い物行く予定だった?」
「そうだけど……慧、本当に大丈夫?」
え?
まさか慧まで……?
そう言われ、恵奈に心配されてしまったがそれどころじゃない。
「まさか、時計の話は本当だった……?」
これではまるで、本当に時間が巻き戻ったようじゃないか。
恵奈には大分心配をかけてしまったが、その日を過ごすうちに私は確信した。
(あの時計は本当に時間を戻してくれる。恵奈の浮気が発覚したのは確か、入学してから最初のゴールデンウイークだったはず……。)
そうして再び、魔法少女から時計を貰った私は……日付を戻した。
絶対に二人を助けるんだ。
2021年4月7日
(恵奈と樹君は既に付き合い始めているはず。)
先ずは、と恵奈に連絡をした。
でも私の考えは甘かった。
(返信がこない……。私、こんなに嫌われてたんだね……。)
だが、これで諦める訳にはいかない。
私は学校終わりの恵奈を待ち伏せした。何度も通い一緒に住んだアパートだ。道順が分からないはずもなく、無事恵奈に会う事が出来た。
(これで話が出来る!)
私は勢いで恵奈に話しかける。
「恵奈!」
「なんでここに居るの?」
彼女は険しい目つきで私を見てくる。
「お願いだから話を聞いて。用件が済めばすぐに帰るから。」
(親友にこんな目で見られるのはキツイな……恨むよ、過去の私。)
「じゃあ用件をどうぞ?」
「あのね、もうこっちから連絡とかはしないから、彼に手を出さないで欲しいの。」
今の私は樹君も恵奈も大好きだ。この話が上手くまとまってしまえば、三人で過ごした幸せな日々はもう二度とやっては来ないだろう。
(でも、私がここで二人から離れれば……二人はきっと上手くいく。)
「それって慧の幼馴染の彼の事?」
「そうだよ。」
「そっか。そんなにも……。」
「わかってくれる?」
彼女はふふっと笑って続ける。
「じゃあ尚更彼に手を出さなきゃね。そんなに嫌なんでしょ?」
私は失敗した事に気が付いた。恵奈は私を憎んでいるのだ。三人で暮らした日々の記憶が私の判断を鈍らせた。
「樹君の為なの! お願い! そんな事したら絶対に後悔する事になるから!」
瞬間、ピリっとした空気に変わった。
「ねえ? 何でいっくんの事を知ってるの?」
(しまった……。)
「調べてたの? 何するつもりなの? そんなに私に嫌がらせしたいの? ねえ?」
「ち、ちがっ……」
「何が違うのよ!!」
(少し考えれば分かることだったのに……。今の恵奈は私を憎んでる。私の言う事なんかまともに取り合ってくれるはずもなかった。)
「帰って! もう話す事なんてない!!」
こうなってしまった以上、私は帰らざるを得なかった。今の彼女には何を言っても聞き入れて貰えないだろう。
それどころか下手をすれば、殴りかかられそうな気さえする。
(前回こんな出来事はなかった。もしかすれば、流れが変わるかもしれない。)
元々楽天的だった私は、愚かにもそう考え日々を過ごす。
そうして特に有効な対策を打てないまま、運命の日がやってきた。
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