第9話 とある幼馴染の後悔
俺には幼馴染がいた。何よりも大切だったはずの幼馴染……。
ちょっと空気の読めない所はあるが、愛嬌があり明るく可愛らしい女の子。
そして俺は、失ってからその大切さに気付く愚か者だ。
高校時代、俺は元々幼馴染の“慧”と付き合っていたが、慧の親友“恵奈”に体の関係を迫られて舞い上がってしまった。
彼女はとびきりの美人。
そんな美人に迫られ、その時の俺はモテるなんて勘違いして調子にのっていた。今にして思えばなんと愚かだったのだろう。
天狗になった俺は、友人達に恵奈が如何に素晴らしい女だったか、最高に綺麗な芸術品のような裸であった事、それを自慢しながら力説していた。
俺の話を聞いて醜い嫉妬に駆られた奴がいたのだろう。
絶対に秘密だと言ったにもかかわらず、そいつらの誰かから話は広がってしまい、結局は恵奈との関係は慧にバレた。
当時の俺は開き直り、あっさりと慧を捨ててそれを別に気にもしていなかった。道を歩けば誰もが振り向く恵奈と付き合う事に優越感を覚え、慧のことなんて忘れていたのだ。
思えばこの時が俺の人生の絶頂期だったのだろう。恵奈と付き合うち、徐々に違和感を感じ始めていた。
彼女は俺と付き合っていながらも、全く俺に興味がないように見える。最初は勘違いなのかと思ったが、確信したのは慧が引きこもってしまった時だ。
慧が引きこもるのと同時に、彼女は何とも思っていないという顔で俺をあっさりとフったのだ。
その時の恵奈が俺に向けた視線が忘れられない。お前はもう用済みだと言わんばかりの心底見下した冷たい目であった。
(ああ……やっぱりな。)
慧に対する嫌がらせの一環として俺が使われただけだったのだ。
俺のちっぽけなプライドは傷つけられたが、あんな素晴らしい女を何度も味わえたというだけで十分に元は取れた気がした。
そして次に俺が思う事、それは……
今更何を……と思われるかもしれないが、慧が大切な幼馴染であった事を思い出した俺は、慧に何度も謝り再び付き合う事になった。
慧が元々俺に執着しているのは知っていた為、謝れば許して貰えると確信していたのだ。我ながらクズだとは思うが、クズでもなんでも慧と関係を修復出来るならそれで良い。
そう思って謝った結果……以前に比べ慧の束縛が強くなってしまったのだが、自分が原因だと理解を示した。
慧だって恵奈に比べれば劣るが、なかなか可愛い女だ。手放したくはない。
大学へ進学すると、慧の元親友“恵奈”に再び関係を迫られた。
二度とそんな事はしない、と思っていたが……
あれ程美人な恵奈の快楽に歪ませる顔が、声が、そして美しい体が……俺は忘れられず、一度だけ……と自分に言い訳しながら再び関係を持った。
やはり恵奈は最高の女だ。
だが、俺の日常はそこから狂い始める。
恵奈と関係を持ったその日、恵奈の彼氏に現場を見られ追い出された。
正直、殺されるかと思った。それ程の憎しみがその男の目に宿っていたのだ。
しかし、恵奈の体を忘れられずについ連絡をしていまう自分がいる。例の一件以来、恵奈とは連絡がつかなくなってしまったが。
慧からは、脅迫して体の関係を迫るなんて……と責められた。
「俺はそんな事してない!」
そう言っても全く信じてくれる様子がなく、それが原因で慧とは何度も喧嘩になった。
恵奈が俺を一方的に悪いように言っているのだろう。
大学でも、女を脅迫して関係を迫る男。そう噂されて友人は離れていき、新たに友人を作る事も出来なくなった。
そんな噂が立っている中で堂々と大学へ行けるようなメンタルは持ち合わせておらず、俺は講義に出席しなくなり、ストレス解消に慧をただ抱くだけで、二人の関係も悪化していった。
俺がいったい何をしたってんだ。浮気なんて誰でも……とまでは言わないが、それなりに経験している奴はいる。俺だけが悪いのか?
過ぎ行く日々の中、慧の俺へ対する執着が薄れていっているように感じる。
そう感じ始め、俺は焦った。慧が大切だと思う気持ちは嘘じゃない。恵奈があまりにも魅力的過ぎて、一時的におかしくなっていただけだ。本当は慧が一番なのだ。
俺は慧に尽くした。慧を大事にしていると行動で示した。
しかし、それは遅かったようで、大学入学から半年で俺は慧にフラれた。
そこから先は何をしても上手くいかなかった。
美人である恵奈と一時期付き合えていたという事実が俺の自己評価を捻じ曲げ、根拠のない自信を持っていた俺は、気晴らしにナンパもしてみたが全滅。
最後にナンパした女の子に「キモイんだよ。鏡見ろ。」と言われ、俺の自信は打ち砕かれた。
大学では噂のせいで友人の一人もおらず、慧の事が忘れられず連絡しようにも着信拒否される始末。
周囲の……まるで全てにおいて俺が悪いという態度が気にくわない。
俺は大学を中退した。
あれから一度も慧には会えていない。あんなに大切な幼馴染だったのに……。
もしあの時に戻れたら……。
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節目まで読んでいただきありがとうございました。
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