番外 その後

 俺達は3人で結婚した。勿論周囲の反対にはあったが、何とか説得した。


(説得したと言えば語弊があるな。慧が反対した親たちを無理矢理黙らせたと言った方が正しいか。)


 一体どうやったのか……俺、恵奈、慧の3人の両親を…計6人の人間の弱みを握って脅したようだ。


 恵奈が言うには慧が洗脳したんだそうだが……そんなワケあるか!



 兎に角、一軒家に3人で同居を始め、今では5人家族になっている。


 俺は恵奈と籍を入れ、慧とは事実婚の状態だった。


 恵奈との間にはくすのきが、慧との間にはれいが生まれ、二人とも可愛い俺の子だ。


 子供たちは一歳違いで仲が良く、順調に育っている。


 怜が3歳の頃から、家の中で色々と不思議な現象が起こるようになったのだが…慧いわく魔法だそうだ。


 結婚する以前、慧は魔法少女に並々ならぬ情熱を抱いていた。彼女はプリティけーちゃん参上と名乗りをあげ、決め台詞まで用意していたのだ。


 どんなタネがあるのかは知らないが、彼女は魔法が使えると言っては時々手品を披露してくれ、家を賑やかにする。


 きっと、その頃から怜にも手品を教えていたのだろう。





 怜が13歳の頃……


「今日の魔法はね! 恵奈ママを若返らせます! だからお小遣い増やしてね。」


 などと言って、恵奈を別室へ連れて行った。数分後、リビングへと戻った恵奈を見た時は驚いたものだ。


 オーガニックの食品がどうとかいう奴なのか、それとも化粧品を変えたのか……。


 恵奈が再会した頃のような若さになっていた。


 慧は「その手があったか!」と言って同じ手品を使った後に若返っていた。


 その日は3人で盛り上がった。特に俺が。


 怜の手品のお蔭で良い思いが出来たので、小遣いを3倍にしてやった。


「本当の魔法よ。いっくん見たでしょ?」


 恵奈はそう言っていたが、魔法とかあるワケないし見た事もない。


 恵奈も慧の影響を受け、魔法少女にハマりでもしたのだろう。



 楠は魔法を使いたいと何度も言っていたが、才能が無かったのだろう。慧から教えてもらっていたようだが、結局使う事は出来なかった。


 前はあんなに魔法だと騒いでいたのが一転し、魔法なんてあるワケない、それは手品だと幼い楠が言い出したのには泣いた。


 きっと手品を使えないあまり、魔法という夢が壊れてしまったに違いない。


 毎年クリスマスには、サンタクロースの恰好でプレゼントをあげようと誓った。


 子供の夢は大切にしたい。





 現在、楠17歳。怜16歳。


 二人は俗に言う…シスコン、ブラコンなのだと思う。


 あまりにも距離が近い。怜に至っては度が過ぎているような気がする。


 でも俺はあまり心配していない。二人がどんな形であれ、幸せになってくれるのであればそれで良い。


 万が一、楠と怜がそういう関係になっても反対はしない。一応腹違いの兄妹が結婚出来る国とかもあるらしいのだ。


 大体3人で結婚しているような俺達は、常識がどうとか言えた口じゃない。


 出来れば、普通の結婚をして欲しいと思うのも親心ではあるが……。




 今日は重大発表があると慧が言ってきた。


 楠と怜が魔法で前世を思い出したんだそうだ。


「偶然魔法っぽくタイミングが重なったんじゃない?」


「樹君。その頑なに魔法を信じないスタンスは、一体どこからきてるの?」


 そう言われても、魔法はないのだから仕方ない。慧に不思議な力がある事は信じているが。


「ちなみに前世ってどんな関係だったんだ?」


「楠と怜は恋人同士だったみたいよ?」


 正直、前世がどうとか言われた時からそんな気はしていた。


「良いんじゃない? 付き合えば。」


「軽いわね。」


「俺達3人は人に言える立場じゃないだろ?」


「それもそうか。」


 そう言えば。


「俺達3人の前世ってどんな関係だったんだろうな?」


「前に調べたんだけど、樹君と恵奈は夫婦で、私はペットの犬だった。」


「小さい頃の恵奈が、ママゴトで毎回慧を犬役にしたがってたのはそういう事か?」


「関係あるかもね。」


 はははっと笑っていたら……


 ただいまー、と言ってリビングに姿を現す恵奈。


「そんなに笑って、何の話してたの?」


「慧の前世が、俺達の飼ってた犬だったんだとさ。」


「そうそう。恵奈ってママゴトの時、いつも私を犬役にしたがってたじゃん。」


「それが関係してるかも……ってね。」


「言われてみればそうだった。」


 恵奈も憶えがあるようだ。彼女は慧の魔法を信じている為か、前世の話をしても全く驚く様子がない。


「それと、楠と怜は前世の恋人なんだってさ。」


「え? それなら付き合えば良いじゃん。」


「恵奈も軽いなぁ。」


「半分しか血が繋がってないから、アリなんじゃない?」


「いや、日本ではダメだろう。」


「そうだったの?」


「そうだったの。」


 あれ?


「もしかして……慧さ。分かってた?」


 ふふっと笑う彼女はこうなるのが分かっていたようだ。


 俺と恵奈は籍を入れているが、慧とは事実婚状態だ。それでも、怜が生まれる際には認知しようとしたのだが断られてしまった。


 従って、書類上は楠と怜に血縁関係が無い事になっている。


「慧は、この時を見越して俺に認知させなかったのか?」


「必ずこうなると思ってたワケじゃないけどね。可能性はあったよ。」


 頼りになる嫁だ。


「流石は魔法少女プリティけーちゃんだね!」


「それはやめてってば~。」


 もう! と言って拗ねる慧と、はははっ! と笑う俺と恵奈。


(楠と怜にも、こんな風に笑い合えるような…幸せな家庭を築いてもらいたいもんだ。)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初恋の幼馴染。~浮気した彼女を壊そうとしたら俺までおかしくなった話~ 隣のカキ @dokan19

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ