第4話 レディ・ルイーズの婚約者
午後になり、私としては若干憂鬱な時間がやってきてしまった。
そう、朝お姉様に伝えていたとおり、私の婚約者がやってくるのだ。
いずれ侯爵家を継ぐ私の夫となる、バイカルト子爵家の次男、エッカルト様。
お父様は現職の騎士なのだけれど、お父様の所属する隊の上司の縁繋がりなのよね……。
まあ、上司の生家が公爵家で、その寄子という縁あるバイカルト子爵家の息子が我がエルドハバード侯爵家に婿入りするってことはうちを自分の陣営に取り込もうっていう魂胆が見え見えなのだけれど……お父様はわかってらっしゃらないのよねえ。
(気がついたら婚約締結していたんだものね……まあ、お断りする程のこともなかったから問題視はしていないのだけれど)
貴族同士の横繋がり、それは結婚という血の繋がりが結ぶ縁ということは理解しているし、それ自体を否定するつもりはない。
ただ、それのせいでパワーバランスが崩れたり我が家にとって不利になるというのであれば問題だと思うし対抗策も講じねばならないのだけれど……。
(いえ、正直に言えばあまり婚約者っていうには不誠実な方よね、よく考えれば)
私が知る『レディ・ルイーズは挫けない』の内容では早々にランお姉様の色気に陥落して、事実確認も殆どせずに義姉を虐げる女と結婚なんか出来るかって突き飛ばしてくるような男だものね。
ただ、それはあくまで創作の話。
そうでなくてもエッカルト様は不誠実な〝婚約者〟なのだ。
私と彼が婚約をしたのは、私が物心つく前……そう、四つだか五つだか、そのくらいだ。
侯爵であるお母様にまで事後報告だったらしく、お父様に驚いて詰問していた姿を見ているから覚えている。
(お母様が病に伏してばかりだったから、公爵家との縁を持ってきてやったのに……とか言ってたのよねえ……)
まあ確かに上位貴族との縁が結べたことは喜ばしいと思うべき何でしょうけれど。
実際には公爵家子飼いの子爵家の次男じゃないかというツッコミをしてはならないのよねえ。
おっと、子飼いだなんて口が悪くなってしまった。
(でも初めての顔合わせ以来私とエッカルト様が顔を合わせるのは精々夜会に参加する時くらいかしら?)
婚約者の務めとしてエスコートはきちんとしてくださるし、私の誕生日にはプレゼントとメッセージカードはくださるけれど、それだけだわ。
普段からお手紙をくださることも、お出かけに誘ってくださることもない。
私が誘って五回に一回、乗ってくださるかどうか。
ご自身は剣の道に邁進したかったのに……とかそんなところでしょうけれどね!
(その才能に恵まれなかったことが彼の残念なところなのかしら? 別に剣の道に邁進しながらでも妻をサポートするくらいできるでしょうに)
まるで私のせいで剣の道が閉ざされたと言わんばかりの態度がちらほら見えるのよねえ、酷い話だわ。
でもだからといって、婚約を解消する理由には弱いってのが現状。
(……平民の後妻と義姉を迎えたと聞いて急に会いたいと言ってきたのは、あちらから解消を申し出たいというところかしら?)
それだったら嬉しいんだけど!
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