第7話 フラグは立った。でも、ブチ折れた。
エッカルト様って
それなら、私が大人しく従順そうにしていたのは彼にとって確かに好みではなかったでしょうね!
(あら? でも別にお姉様は最初から厳しい対応をなさったわけではないし……)
エッカルト様に対して愛嬌を振りまくような素振りをなさったりもしていないし、勝手に見つめられて勝手に気を遣われている……だけの、ような?
「ちょっとルイーズたん、ソイツのそばから離れてあーしの近くにきな? そいつ絶対ヤバイって。ヤバすぎて草も生えないから」
「お姉様、さすがに私の婚約者ですから……」
一応なんて言葉はつけませんでしたよ!
でも言わなかっただけで、私もヤバイやつだって思ってしまったのでお姉様の近くにそっと移動したのは内緒です。見えてますけど。
でも私が移動したことも、エッカルト様には大したことではないのでしょう。
ウットリとした表情でラン姉様を見ているので、私たちはぞっとしてしまいました。
「ルイーズは確かに僕の婚約者だ。いずれはこの侯爵家に婿入りする予定で……だから、僕はカサブランカ殿、貴女にとって将来の義弟になる。どうか、親しくエッカルトと名前で呼んでほしい」
ああ、なんてことでしょう。
これが、強制力というものでしょうか?
(いえ、それは違うわね……多分)
もしエッカルト様がお姉様のことを好いたのが強制力というならば、お姉様も私に対して意地悪でなければオカシイですからね。
しかもお姉様はお姉様でエッカルト様の発言を受けて、思いっきり嫌そうな顔をしていますし……令嬢としてはアウトな表情ですが、私は咎める気持ちになれませんでした。
むしろ、私も嫌そうな顔をしそうでしたので! 堪えきりましたけど!!
「マジ無理」
「えっ」
「なんでアンタみてーのがルイーズたんの婚約者なわけ? あーしたちが仲いいの、見たらわかんべ。なのに何かっこつけてんのか知らないけどさー、マジ無理なんだけど。確かにあーしは平民出身だし? 困ってるっちゃ困ってるよ、お嬢様なんて無理みしかないしさ」
立ち上がったお姉様が、私の手を取る。
そして睨み付けるようにしてエッカルト様に宣言した。
「今日はもうお客様はおかえりだかんね! 誰かこの人見送ってやって!!」
私が口を挟むまでもなく、お姉様の出した大きな声に同じ部屋にいた侍女だけでなく廊下から幾人かが現れてエッカルト様を連れ出していきました。
え? 何が起こったの?
もしかしなくても、みんなエッカルト様のこと嫌い?
「あの、お姉様……婚約者を見送りしないのは失礼になるのですが……」
「マ? ええーかまちょすぎん? でもしかたないかぁ~、そゆことなら二階の窓からお見送りすればいいんじゃね?」
「に、二階ですか?」
わざわざそのために二階に上がるの!?
いや、大した距離じゃないけど。
目を丸くする私にランお姉様は少しだけ考えて、しょうがないなあと笑った。
「玄関からお見送り~、アイツ、あたおかだからできるだけ離れてあーしのそばにいてね!」
半分くらい何を言っているかわからないけれど、お姉様が私を気遣ってくれていることはわかる。
でもお願い、もうちょっとわかる言葉でよろしくお願いします。
(……子爵家と、公爵家から文句が来ないかしら……うっ、今から胃が痛い)
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