第11話
高校最後の大イベント、卒業式。三年間お世話になった学校とのお別れに、つい涙が溢れてしまう。
「泣いてんのか? 修也」
「お前こそ」
高瀬と熱く抱擁を交わす。普段なら男臭いワンシーンになるが、卒業式というフィルターが、とても美しい光景のように映してくれる。
「お前は東京、行くんだよな?」
「そうだな。高瀬は地元残るんだよな?」
それぞれの道に進む俺たち。俺は東京の大学に進学して、高瀬は自分の家が経営している酒蔵を継ぐため、地元に残って実務経験を積みながら国家資格の勉強をするんだそうだ。
「二十歳になったら、お前の家の酒で乾杯だな」
「おう! 任しとけ!」
「じゃあ、またな。高瀬」
「おう! じゃあな!」
正門の前で大きく手を振って、俺たちは自分たちの選んだ道を歩き始めた。
見上げた空は雲一つない青空。ほんのりと温かい日差しが、俺たちの門出を祝うように降り注いでいる。そんな穏やかな空気の中にいると、上京することへの不安とか、いろんな恐怖心が自然と和らいできた。
「前向いて、オレらしく頑張るぞ!」
誰もいない道の真ん中で、自分自身に宣言して力強く一歩を踏み出した。
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