第4話
翌朝、目を開けると隣ではまだ葵が気持ちよさそうに寝息を立てている。正面にあるアナログ時計を見上げると、丁度、七時になるところだった。
「支度しないとな」
今日は平日。つまり学校があるということだ。ちらりと葵の方に視線を向けると、少し口を開きながら表情を緩ませている。楽しい夢を見ているのだろう。そう考えると起こすのが申し訳なくなる。それに、もう少しだけ葵のかわいい寝顔を見ていたい。
「もう少しこのままでいるか」
瞼を閉じている葵に笑いかけ、ふわりと頭を撫でた。すると葵は「エヘヘ」と小さく笑って、ゆっくりと目を開けた。
「ここどこ~……」
虚ろな目を擦りながら葵が独り言のように零す。
「俺の家」
少しぶっきらぼうに答えると、葵はハッと驚いたように目を開けて慌てて胸元を抑えた。
「阿呆。童顔に興味ねぇよ」
寝起きで露わになっている額にデコピンをして立ち上がった。葵は絶対に痛くない額を「イテテ」と言いながら押さえて、のそのそと立ち上がった。
「ほら。学校なんだから、家戻って制服に着替えて来い」
「ふぁ~い」
あくび交じりの返事をしながら、葵は俺の部屋を出て行った。小さく息を吐きだしてから、濃紺のカーテンを開いた。外からは眩い光が差し込んできて、目の前を青が埋め尽くした。清々しい朝だ。
「今日も学校か……」
鬱々とした気持ちを、迷惑になるだろうが小鳥の背にのせて遠くに飛ばす。気持ちが晴れたわけじゃないが、ちょっとだけ心が軽くなった気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます