生きている悪い奴らの業が深すぎる。心動かされる最恐ホラー

ネットのホラー小説は一時期ハマって見ていましたが、首の裏から背中にかけて寒気がしてくるし、鳥肌立つのが治らないほど皮膚に張り付いてくる恐怖に、読むのを控えていました。
今回この小説を見て、鳥肌や寒気に、季節柄もあるのかな?三寒四温で寒暖差にやられているだけかも?と自分に問うてみましたが、誤魔化せない。
この小説でも例外はなく寒気と鳥肌がおさまりません。
でも、この小説は読まなきゃ良かったなんて思えないです。怖いのにいっきに読んでしまいました。
目に見えないモノたちの発するメッセージが切なくて、おぞましくて、魅力的で、悲しくて。
お話の後に、助手のかなめちゃんの考察やらまとめやらあるので、ただ怖いだけの話ではなく人間ドラマとして見ることができます。

山下邦夫の話では、カラフルなネイルの指がそこらじゅうを這いまわる描写がありました。恐ろしかった。この恐怖を芸術に昇華したら、案外平気になるんじゃないかと思い、ピカソの絵やムンクの叫びの世界を想像してみました。が、あの絵たちもなかなかにおぞましいということを思い出して、恐怖が倍増してしまいました。

プールは、心の底から悲しかった。望まれない命があること、その存在を否定される存在があることを思い出して、実際に涙が出てしまいました。

旅館では、自分のある経験が脳裏を過りました。それは、夏の経験です。窓を開け放って眠っていたら大きなムカデが体を這いずり回っていた体験。あれ、髪の毛で撫でられているかのようなさわさわとした感触が皮膚にあるのですね。そして、夜中に居間で水分補給をしていたら素足にさわさわとした感覚があった体験。それもムカデが、自分の体を登ってこようと這っていたのです。
自分はムカデに好かれる蟲使いなのかもと、自分を納得させようと言い聞かせている体験ですが、なにせ、怖い!トラウマです。小説も!

高橋家の押し入れでは、簪にとりつく男の怨霊が気になりました。どんな経緯で?と、なぜ押入穏婆にそれを突き立てる?と。

旧友もとても悲しい話でした。
恨んでいる人間に改心されたら困る、みたいなことを恐ろしい存在になった中村が言っていましたが、同感です。ずっとずっと自分を虐げてきた人間が、毒気の抜けた老人になる姿を、自分は見たくない。いつまでも傍若無人で人の心を顧みない鬼畜でいて欲しい。それは、ここに居るための理由になっていて、生きる理由になっているからです。あの人の心を変えるのは、私であってほしい、というどうしようもないワガママなのですが。
中村が父親の元に、散々嬲られて弄ばれてみるに堪えないボロボロの殺された当時の姿で現れたのは「これがあなたのしたことだ」と言いたかったのだと勝手に想像しています。
自分もわざと自分の姿をボロボロにして、恨んでも恨み切れない人の前に「あんたは私をこんなに傷つけたんだ」というメッセージを持って現れてみたことがあります。あの人がそのメッセージに何にも気づかなかったのには、愕然としました。

人間の目に見えない存在になったら、この世界で誰にも知られずに彷徨うしかないのでしょうか?
できるならあの世があってほしいなぁと思います。その時は、何も身に着けずに、何の荷物も持たずに、裸一貫で逝きたいと思います。人間の目に見えないから、裸でも、わいせつ物陳列罪で逮捕されたりしないですよね(笑ってくだされば本望です)

時々入るグルメの話は、食欲をそそります。そして、助手の一生懸命でカワイイかなめちゃんとクールなのか情熱家なのかわからない卜部さんのラブコメ、夫婦漫才に、ホラー小説を見ているのに笑顔になってしまいます。
次の作品を拝読します!

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