05 保昌山(ほうしょうやま)
その夜、
彼女は紫宸殿のことが気になって起きていたので、すぐに門を開けた。
開けた先に、
「梅……」
そこには、
「い、和泉式部どの」
今こそ。
告げねば。
この、恋よりも恋に近しい想いを。
その、想いの名を。
*
戻ると、
「すまんの」
「して、首尾は?」
「上々や」
白湯を
「そういえば」
「何ですか」
「保昌の『恋よりも恋に近しい気持ち』て、ホンマは何ていうんかのう?」
「そんなの、決まってるじゃないですか」
赤染衛門が「愛ですよ」と答えると、道長は「せやな」と膝を打ち、そして二人は大いに笑った。
*
さて。
平井保昌と和泉式部はその後どうなったのか。
今日のわれわれは、それを京都の祇園祭で知ることができる。
それは、保昌が和泉式部に梅の枝を献じる姿をご神体としている。
そして、この保昌の故事にちなんで――祇園祭の
【了】
恋よりも恋に近しい ~京都祇園祭「保昌山(ほうしょうやま)」より~ 四谷軒 @gyro
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