政略結婚に始まり、そこから波乱に満ちた人生を送ることになる、〝悪役令嬢〟たる「わたし」のお話。
悪役令嬢もの……ではなく、ゴリゴリの歴史ものです。
国家規模の大きな出来事の流れを、長いスパンで(少なくとも「わたし」の一生涯くらいの長さで)追った物語。
いや、悪役令嬢もの「ではない」とまで言い切ってしまうのもまた違うというか、少なくとも主人公当人がそう自認している以上、それはそれで立派な悪役令嬢ものなのだと思います。
というか、そこが好き。
このフェイントというか、悪役令嬢というキーワードの絡め方。よく知られたジャーゴン的な用語を、でも「そういう用語」とせずに読んでも意味が通る感じ。
個人的に、私(このレビューを書いている自分自身)が歴史に明るくなく、知識がほぼないままに拝読したのですが、それでもがっつり重厚な読み応えがありました。
物事の大きな流れや悲喜の無常感のような、歴史ものならではの滋味がたっぷり。
歴史の知識のある人にはまた別の楽しみがあるかもしれない、大変奥深い味わいの作品でした。