かぁちゃまはフリーでタンピンな件

サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ)

第1話 霊力を無駄使いする占い師の件

かぁちゃまは業界では評判のいい占い師らしい。

「えっ?ねーたん何でそんなこと知ってるの?」


「こないだ達哉パパとそんな話してたよ。聞いてなかったの、ひより?」

「聞いてなーーい。美味しいものの情報じゃないもん、興味なーーい」


相変わらず美味しいものにしか興味ない、ひより。本当に双子なの?ってほど見た目も性格も違う私、すずなの双子の妹。ひよりはいつも私のことを『ねーたん』って呼ぶの。一応姉だと思ってるらしい。

「ねーたん、おやつはまだ?かぁちゃまは?」

「かぁちゃまは仕事中。おやつはさっき食べたでしょ。」


食べることが大好きな、ひより。かぁちゃまと私の間では『食いちぃ』と呼んでいる。美味しいものが好きで、やりたいこと優先で周囲をあまり気にしない自由な性格。ちょっと羨ましい。


ひよりは『しっかり者のねーたんは、かぁちゃまから信頼されてて ずるい』っていうけど、私は甘え上手のひよりが羨ましいよ。


あまりに似てないから双子だけど『イチランセイ』じゃないんだろうねってひよりが言ってた。ほんとそうかも!今度かぁちゃまに聞いてみよう!


「あぁもう面倒くさーーーーーいっ!」


かぁちゃまの仕事部屋から大きな声が聞こえてきた。その後、机をたたく音や書類投げる音がしてる。なかなか鳴りやまない。


「かぁちゃまキレた!」

ひよりと顔を見合わせて同時に叫んだ。


「絶対コーヒーとおやつ持ってきて休憩するって言いだすパターンだよね、ひより」

「わーい。おやつ貰えるかな。おやつーー!」


仕事部屋が静かになってしばらく、かぁちゃまは濃いめのコーヒーと甘いものを持ってリビングに来た。

「もう午前中は仕事しない!休憩、休憩!!」


「おつかれさま~」

間違いなくご機嫌ナナメのかぁちゃまに労いの言葉をかけて様子をみる。


「あぁもう疲れた!すずひよ。癒して!」


今日の疲れはひどいみたい。本当に疲れたら私達に甘えに来るんだよね。仕方ないなぁ、どっちが子供なんだか。妹のひよりはそんなことより、スキあらばおやつを貰おうと狙ってる、やっぱり食いちぃだわ!


ソファに沈み込む様に座ったかぁちゃまの両脇に座って顔を見上げる。

「何があったの?」小首をかしげて尋ねてみる。


「もうさぁ今日の相談って、どうやっても叶わないことだからやんわり無理って言ったんだけど、納得してくれなくて困ったわ。自分が思った答えを言って欲しいなら占いなんて必要ないと思わない?そういう人に限って『あの占い師はダメだ』っていうのよ。もうこれだから恋愛系の占いって嫌いぃぃぃ」


かぁちゃまのグチが始まった。こうなると長いんだよね。かぁちゃまはいつも恋愛系の占いすると怒り出すんだ。


「じゃあさ、恋愛以外の占いだけにしたら?」

「そうなると相談数が激減するのよ」

「じゃWワークするとか?」

「それだと家にいる時間が短くなって、すずひよと一緒の時間が減るの。それはもっと困る。」


「かぁちゃま私達のことも考えて今の仕事にしたんだ。嬉しいな。」


ひよりはそう言ってるけど、本当にそうかなぁ。占いとかお祓いしか出来ないだけなんじゃないの。小さい頃から才能あるって言われて有名な先生のところで修行させられたって聞いたことあるし。


ひよりは、かぁちゃまに気づかれない様におやつに手を伸ばそうとしてる。

「ひより!今日のおやつは大人の食べ物だからあげられないよ」


まだ何もしてないのに注意されて驚くひより。さすがかぁちゃま、グチを言っててもおやつを狙ってたひよりの行動を見抜いてる。こういうところは霊感あるのかなと思う。


おやつを狙ってたのがバレてばつの悪いひよりは話題を変えようとしてる。


「ねぇねぇ、かぁちゃまの占いってタロットとか使う?」


「何も使わなーい。東洋系の占星術と野生のカン。」


「野生のカン?長年修行して野生のカンで占ってるの?」


「そうだけど、何か問題でも?」


「野生のカンなら、すずなにも出来そうな気がする~」


「ひよりも出来そうな気がする~」


「ひよりは美味しいものを探す野生のカンならありそうだね、すずな」


「あるある、ひよりなら絶対あるっ!」


「えーーっ!ひどーーい!」


かぁちゃまの気持ちが和んできた時、仕事部屋の電話が鳴った。でも、かぁちゃまは全然動こうとしない。押し黙ったまま、かぁちゃまは電話の音を聞いてる。


「かぁちゃま、どうしたの?」


「もっと面倒くさい奴から電話きた。」


「誰から?」


「達哉からご飯食わせろ!電話」


「何でわかるの?」


「コールの音がチャラい!それにあの音はお腹すいた音だね」


「電話出なくていいの?」


「出ないよ。いつも電話切れた頃ここに来るし。」


うんって返事しようと思った途端、玄関チャイムが鳴った。かぁちゃまはダルそうに体を起こして玄関に迎えに行った。ドアが開いた音がした。


「かや!頼む、飯食わしてくれ。って言いたいんでしょ?」


「あぁ… いいかな?」


「いいかなも何も、もう来ちゃってるよね?達哉」

「う、、うん、、、」


「電話にも出てくれないくせに何でわかるんだ?」


「あのチャラい音は達哉以外いないもの。」


「俺がチャラい?」


「でしょ?」

「う、、うん、、、」


かぁちゃまは達哉パパの顔をのぞき込む様に言う。達哉パパはかぁちゃまの迫力に負けて返事してた。かぁちゃまの方が強いってことは『かかあ天下』ってことだね。すずなは家庭内が平和ならそれでもいいよ。


「かぁちゃま、言った通りだったね。」

「当然よ!こう見えても霊感使って占いしてるプロだからね。あーーーっ!また余計なところで霊感使っちゃったよ!霊力減ったらどうしよう~」


霊感って使うと減るのかな?今度またかぁちゃまに聞いてみよう。家族が揃ったところで今夜は家族そろって一家団らんかな。達哉パパを歓迎してない様に見えたけど、かぁちゃまはいうだけ言ったら夕食の準備を始めた。


「平和だ!一家団欒が一番いいね、ひより」

「ねーたん、ねーたん。団らんって食べられる?美味しい?ひより夕食前におやつ食べたかったな」


ひよりは相変わらず食べることしか頭にないみたい。それもまぁ平和ってことでいいか。こうして何気ない一日が過ぎていきました。すずな幸せ。

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