第3話 占い師かぁちゃまの実力が見えた件

すずひよのおうちは今日も平和。かぁちゃまは仕事も一段落してゲームしてる。いいけど、ごはんの時間だけは守ってね。

でもね、かぁちゃまが平和にしてる時に限っていろいろ事件が起きること、すずな知ってる~


「ねーたん何笑ってるの?」


ひよりに見られちゃったよ。でもまだ何も起きてないけどなぁ。

って思ったら、かぁちゃまの仕事部屋の電話が鳴り始めた。


かぁちゃまの目線が鋭い。いつものボケボケした表情とは違ってる。


「達哉?」


かぁちゃまは不審な顔をしながらも仕事部屋へ消えて行った。

達哉パパからの電話は出ないんじゃなかったの?出なくてもすぐ来るって言ってなかったっけ?


「うん、分かった分かった!もう近くまで来てるんでしょ。早く来れば?」

って声が聞こえてかぁちゃまが仕事部屋から出てきた。


ソファーに座ったかぁちゃまは目を閉じて右の人差し指を立てて何かよく分からないことをブツブツ言ってる。その後すぐに


「さ、準備できたっと!すずひよ~達哉来るけどいいって言うまで無視しててね」


「は~い」

「は~い」

意味がよく分からないまま、ひよりと2人返事をした。


ピンポ~ン!


玄関のチャイムが鳴ってかぁちゃまが迎えに行った。


「なぁかや、俺何か憑いてないか?」

「憑いてないと思うけど。」

「いや何かがおかしいんだ。みてくれよ!」

「憑いてないよ。それとも憑くような場所に行ったの?何か悪さでもした?」

「何もしてない。でも原因不明で調子悪くてさ。こりゃ何か憑いてると感じたんだ。」

「でも憑いてない」

「みもしないで簡単に判断するなよ~」


かぁちゃまが呆れた顔をしてる。ついでにちょっと怒ってるみたい。こんな時のかぁちゃまは地味に怖いんだよね。


「達哉、あなた誰にものいってるのかな?私が憑いてないって言ってるんだから憑いてないの。」

達哉パパ腰引けてるよ。

「えっ、いやそれは分かってるけど、何か根拠を示して欲しくて…」


「あのねぇ達哉。ここは私の大事なすずひよがいるの。そんな場所に変なもの憑けた人を入れるわけないでしょ。」


「あぁそういうことか」

「さらにいうとさ、この家は常に結界張ってるの。変なものが憑いてたら入れない様になってんの。」

「結界?」

「そう、変なものが入れない様にしてあるってこと。達哉は問題なく入れたでしょ?」

「あ、そうだね。いつもと同じで普通に入れたなぁ。」


「で、達哉ここ座って!」


うわぁ!かぁちゃまの『ここ座って』が出た!あれって優しそうに見えるけど、何かやらかした時の尋問モードだよ。達哉パパ大丈夫かな。


「ねーたん、達哉パパ何やらかしたの?ヤバい?」

普段よくやらかして尋問されてるひよりは敏感に反応してる~(笑)


「ここに座ればいいのか?何か美味しいものでもごちそうしてくれるってか?」


気づいてないのは達哉パパだけみたい。


「喜山達哉くん。さて、きやま君は体調崩す前にどこに行ってたのかな?」

「山に登ってた。」

「その時に女の人に会ったよね。山歩きするには不似合いな服着た…」

「えっ何で知ってるんだよ?少し話したけどいい人だったよ」

「その人、生身じゃないから!」

「ええーーっ!マジか?!」

「分からなかったの?」

「全然…普通に生きてる人だと思ったんだ。」

「それで憑りつかれたわけか。鼻の下伸ばして生気吸い取られてりゃ世話ないわね。」

「でも、さっき憑りつかれてないって言ったじゃん!」

「言ったよ」

「じゃ何で憑りついたっていうんだよ。」

「電話来た時はガッツリ憑いてたから、来るまでに祓ったの。」


そうか!さっきのかぁちゃまの妙なポーズとブツブツ言ってたのはお祓いしてたんだ。


「憑いてるなら先に説明してくれりゃいいじゃん。」

「だから今、説明してる」

「いや、祓うまえに」

「だめ!すずひよいるから、ここに持ち込まれちゃ困るの!」

「あぁそういうことか…」

「それにね、正式なお祓いのご依頼なら6桁のお金かかるけど、いいのかな達哉くーん」

「えっ!お祓いってそんなに高いの?」

「あのね…お祓いは一つ間違えたら命取りなの。命がけの仕事だもん、しっかり払って貰わなきゃね~。」


達哉パパは苦笑いしながら笑顔が固まってる。


かぁちゃまはコーヒーの用意をしながらニヤッと笑ってる。まだ何かあるみたい…。


「で、達哉。本当の用事があるよね?」

「えっ…」

達哉パパの息が止まった。どうしたんだろう…。


「もう分かってるなら聞くなよ。」

「分かってるのは大事な用事があるってことだけ。だってその先は見えない様にしてるでしょ。違う?」

「隠してるわけじゃないんだ…。でも…。」

「でも何?」


達哉パパは大きく息を吸って気を落ち着かせてる。重要なことを言うつもりなのかな。


「今日みたいなこともあれば助けて欲しい。反対にかやが困った時は助けるから一緒に住まないか?」

「建前をありがとう。で、本音を言ってみ。」

「俺もすずひよと一緒暮らしたい。すずひよの本当のパパになりたいんだ!」

「それは知ってた。いつか言うと思ってた。私よりすずひよだよね。」

「うっ…バレてたか。」


あれっ?本当のパパって…。達哉パパは私達のパパじゃないの?

じゃあ私達の本当のパパはどこ?


「ひより~達哉パパは私達のパパじゃないんだって。私達の本当のパパって誰なんだろう。」

「ねーたんが分からないのに、ひよりに分かるわけないもーーん。」


「あっすずひよがパニクってる。もう、達哉がいきなりそんなこというから…」

「俺だってずっと考えてたことをやっと言えたんだよ。」


そりゃパニクるよ。ずっと達哉パパだと思ってたのに、パパじゃないってなんで?

すずひよ、いきなり父無し子になっちゃったの?


「かぁちゃま…あのね…、達哉パパは私達の本当のパパじゃないの?」

勇気を出して聞いてみた。


「うん、そうだね。本当のパパじゃないねぇ。達哉がパパなら、すずひよみたいに可愛い子は生まれてないわ。」

「じゃあ本当のパパはどこ?」

「あぁ~それか…。ん…実はねぇ…」

「実は?」

「私にも分からないんだ、これが~あははは~」


かぁちゃま笑ってる。わからないってどういうこと?

笑いでごまかせることなの?


「ひより~」

「ねーた~ん」

その日の私達のパニックは収まることはなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る