第4話 占い師がフリーになると決めた件

昨日は用事が終われば帰るはずの達哉パパが夜までいる。

「晩ごはん食べて帰りたかっただけじゃないの?」ってかぁちゃまは笑ってたけど、少し辛そうな目をしてた。


私達は昨日の達哉パパが本当のパパじゃないって知って頭の中がワチャワチャになったまま。

ねーたんはきょとん顔のまま固まってる。


かぁちゃまと達哉パパは普通にご飯を食べて、いつもの会話をしてるけど空気が重い。

ひよりこういうの苦手~。


食事が終わってコーヒーを飲みながら達哉パパが重い口を開いた。


「さっきの話だけど、俺と住まない理由はあの事件のせいか?」

「…ん。認めたくないけど…。そう…かな。」

「もう5年も前のことじゃないか。俺は気にしてないし、かやも忘れれば…」


その言葉を聞いたかぁちゃまは、急に達哉パパの左肩を指さして言った。

「ここ。この傷。忘れられるわけないよ。私のせいだから…。ごめん…。」


珍しく強気のかぁちゃまの表情が曇ってる。


「俺は気にしてないって言ってるじゃないか!それに今はあの時以上に霊力も上がってるだろう。」

「今は…ね。でも私はあの時の自分が許せないんだ…。だからごめん。」


かぁちゃまと達哉パパの間に昔何かあったみたい。

不意にねーたんがツンツンしてきた。その視線の先で、かぁちゃまが泣いてた。


とてもシンコクな話みたい。

ん?でも、そのことと、私達のパパじゃない話は別だよね…。


「かや、忘れられないのは仕方ない。でも俺は諦めない!絶対すずひよのパパになる!」

「一緒に住みたいじゃなくて、すずひよ目当てなのね。」

「当たり前だ!こんなに可愛い2人を簡単に諦められるわけないだろう。」


達哉パパはそう言うけど、本音はかぁちゃまが好きだからだよね。

でもそれを言ったらかぁちゃまの負担になるからだよね。それなら、ひよりにも分かるよ。


「それじゃ今日は帰るよ。また来るからな、あ・き・ほ!」

「あきほっていうなって言ってるでしょ!」

「ははは~分かってるよ、あいお。またな。」

達哉パパは言うだけ言って帰って行った。

さっきまで泣き顔だったかぁちゃまも今は笑ってる。


静かになった部屋でいつもの3人でまったりタイムが始まった。


「ねぇすずひよ。達哉にパパになって欲しい?」

「うん!」

「そうか…。それなら昔のことを話しとかなきゃだね。」


そう言って、かぁちゃまは5年前のことを話し始めた。


「あの頃の私は周囲からもチヤホヤされて天狗になってたんだ。そんな時にお祓いの依頼を受けたの。その案件はね、依頼を受けた霊能者達が祓いきれなくて怪我したり、寝込んだりしてたのよ。

最後に依頼を受けた霊能者はお祓いの後、瀕死の状態で発見されたこともあって、力のある霊能者もお祓いの依頼を敬遠するようになってた。


お祓いをする人がいなくなって若いけど力があるって噂されてるの霊能者ってことで名前が出て依頼がきたの。お祓いの師匠にも相談したけど油断ならない相手だからっと止められた。それでも困ってる人を目の前にして断ることはできなかったのよ。若かったのよねぇ~。


それで実際にお祓いをしたら、あっさりと終わって安心して気が緩んだんだね。その隙を狙って、新たな霊団を引き連れて戻ってたんだ。でも自分の霊力を過信してたし、結界は完璧だったら大丈夫と高を括ってたのよ。霊団の力で私にダメージはあったけどそれほどではなかったのね。予想したほど強くないと思ってたら、霊団は

最大の力を達哉にぶつけた結果、達哉は大事故に遭ったのよ…」


「でも、それってたまたま同じ頃になったなだけじゃないの?」


「すずな…。私もそう思いたかったよ。でもさ、その時私はお祓いに失敗して体調悪くなって寝込んでたんだ。その隙を狙われたの。やっと体調が戻って入院してる達哉の見舞いに行った時にね、達哉の後ろに霊団の影が見えたんだ。何となく気づいてはいたけど、その時に自分の失敗を突き付けられて力が足りないことを痛感したんだ。」


「ねーたん、ねーたん。ツウカンってどういう意味?」

「すごーく辛かったって感じかな…」


「達哉は平気な顔をしてるけどね、発見された時は意識がないほど重傷でね、今でも皮膚が陥没するほどの傷が残ってるのよ。あれを見ると辛くて…」


そうか、自信満々の かぁちゃまにも黒歴史があったんだ!こんなに辛そうにしてる姿初めてみた!


「黒歴史っていえばそうだし、反省もしてる。でもあの事件は断るいい理由にもなるんだよね。ふふふっ」


あれっ?かぁちゃま辛いから達哉パパと一緒に住まないんじゃないの?あの涙は断るための演技だったの?


「あの時は本当に辛くて申し訳なくて涙出たけどさ、怪我したのは達哉の行動にも問題あったしね。すずひよが、どうしてもパパが必要なら考えるけどさ、特にいなくても問題ないからね。絶対パパ欲しい?」


欲しい?って聞いてるけど、いらないよね?!って言ってるとしか思えないよ。

ねーたん、どう答えたらいいの~


「かぁちゃま、素直に面倒くさいって言おうよ。いつも『フリー』が一番いいって言ってるの知ってるよ。」


「すずなにはバレてたか。そうなんだよね。仕事に集中したいし、すずひよとイチャイチャする時間が、達哉のせいで減るの嫌なんだも~ん。」


「ねーたん、すごい!かぁちゃま見抜いてる!双子なのにどうしてこんなに違うんだろう。」


「ん?ひより。双子って誰のこと?」


「すずひよ。双子でしょ?」


「うんにゃ、違うよ。あんたら年子だよ。年子…。まぁ年子かな。うんうん。」

「えっ…トシゴ?それって何?」」


「一つ違いだよ。すずなが1つ年上。お誕生日の関係で数か月同い年になるけどね。」


「ええーーーっ!ねーたん知ってた?」

「知らなかった…」


いつもは冷静なねーたんもショックを隠せない。


達哉パパがパパでなかったことに続いて、今度はすずひよ双子じゃなかった事件…。

うちの家庭って大丈夫なのかな。なんだかなだまだ波乱が続きそうで不安だよ、、、。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る