ゼロ章 侍道化と闇勇芸団 その11

「うわああ! ちくしょう! …サイコ野郎!」

 煌才は倒れた。

「ぐぐぐぐ、…この悪魔め!」

「悪魔じゃないよ! 天使だ〜ん! ……グサッ!」

「がああ…ああ…。」

 氷吾も倒れた。美空は踊ろうとしたが、ある殺意に気づく。

「おんやぁ〜? 君は…」

(松平家の城で働いていた介錯兼処刑人…全身黒とか…ノービバ…)

 美空がそう考えていると、括正は名乗りをあげる。

「闇勇芸団の最後の大砦、侍道化―岩本 括正が貴様を処刑する!」

「君が生き残り? ふふ、無念に重なる無念だね〜。君は実力でも身分でも、器でも僕ちゃんには勝てない、一生ね。だって汚い君は僕に殺されるだか…」

 ギロッっと括正が睨んだ。

「ひょえー!」

 ちびりそうになる美空。

(な、なんだあのガキ⁉︎ 僕ちゃん、背筋が…)

「チェストォ!」

(…‼︎ 接近された! だが防げる!)

「美…」

 カーン!

「があああ!」

(いっ、痛いよー! ぶつかっただけで、腕に激痛! 体が勝手に後ろに下がる!)

 カーン! カーン! カーン! カーン!

「うわああ! 痛いよお! どんどん後ろに下がる僕ちゃんかわいそう〜!」

「…俺様がもっと泣かせてやる!」

 括正はそう言うと、刀を一旦納めて、跳んだ。美空はその大胆さに呆気に取られた。

(飛膝蹴り⁉︎)

「苦しめー!」

 ガゴーン!っと括正の蹴りが美空に炸裂する。さらに後ろにぶっ飛ばされる。

「ああああ! 痛い! 岩のように硬い蹴りだー! ちくしょう!」

 美空は立ち上がり、刀を構える。

「連続の美刃を喰ら…」

「黒鎌乱閃!」

 侍道化の無数の斬撃が美空を襲う。

「ああああ! 僕ちゃんの金の鎧が削られていく! ああ…」

 カキーン!

 美空の手から刀が弾かれた。括正はまたもや刀を納める。

「おらああ!」

 ドドドド!っと今度は無数の拳が美空の顔を襲う。

「いばい、いだいよー! やべろ! がきゃ! 僕ちゃんの顔が!」

「黙れゲスクズ! 許さん! 許さん! よくも…俺様のもう一つの家族をおお!」

 ドカーン!

 ズズズズ。美空は後退りする。そして分析した。

(拳が止んだ? 隙ありかな? 所詮はガキの体力というわけだ…)

「…道化乱歩。」

 シュンシュンシュシュン!

(変則的過ぎる! まずい軌道も読めない、動きが予測…)

 ズシュウウン!

(背中が…痛い!)

「ビバアアアアア!」

 美空は絶叫しながら膝をつき、後ろを見た。そして青ざめる。括正は卑劣に美空に対してニヤけていたのだ。

「……黒鎌一閃。背中の傷を永遠の恥にしな。」

(……! 奴にきちんとトドメを刺したいけど、この戦場の部分は危険だ。退避しよう。)

 括正は急いで、退却する。美空は苦しみながらも不思議がった。

(奴が…逃げる?)

「え? …ああ…こんにちは。」

 ドドドドドドドドドドドド!


 この戦いによって、美の区は勝利を収め、兆の区は他区への進軍の禁止を朝廷によって命令されたが、それはまた別のお話。

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