ゼロ章 侍道化と闇勇芸団 その10

「ハァ…ハァ…上之介さん…。学さんに球郎さん……和泉……みんな優しかった。なんで優しい人がどんどん死ななきゃいけないんだよ!」

 括正は敵を斬り、戦塵を突き進みながら、叫んでいた。ふと立ち止まる。

「……! 武衛殿!」

 涙を溢れさせながら、お腹が上になるように傾ける。

「括正…か…」

「そうですぞ! 僕です! もう安心です! ここからは僕が守りますから!」

「そのまま…優しくな…」

「え? うううう〜!」

 息を感じない死体に括正は悲しみを隠せない。だが勘は鋭く働いた。

「……! 忠時殿!」

(頼む! 生きててくだされ!)

 急いで駆けつける。

(……! 銃弾が!)

「この声は…括正かの?」

「そうですぞ! まだ死んでもらっては困りまするぞ! この括正、剣の腕がまだ未熟故…」

「ワシの“孫”でいてくれて…ありがとう…。」

「嘘でしょ⁉︎ 冗談だとしても笑えませぬぞ! ああ…あなたはゆっくり余生を…うう…。」

「括正どん。」

 優しく大きな手が括正の肩を叩く。

「平六さん! よかった! あなたは生きて…美空ってクソ野郎がみんなを…」

 ズドンっと平六は座り込んだ。

「すまんな、括正どん。オラもやられた。よく聞け。…美空は強い。けど人間だ。今団長と副団長が戦っている。君も闇勇芸団の一員なら加勢しろ!」

 平六は座ったまま、息を引き取った。括正は涙をポロポロ流していたが、決意は固まっていた。

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