ゼロ章 侍道化と闇勇芸団 その2

「おい、聞いたか? 美の区に強い兵団が編成されたってよ!」

「知ってる、知ってる。名は闇勇芸団だとよ。響きがええの〜。」

「何でも団長は剣の達人で副団長は松平様の元側近の凄腕軍師だったんだとよ。」

「団員も表舞台に出た忍者だったり、引退から引っこ抜かれた老兵、脱藩した武芸の達人、武士になりたい農民や町民。」

「少数だが凄腕揃い。」

「よく集まったもんだよな。」

「何でも世直しが目的なんだとよ。」

「立ち回りや交渉もできてるんだな。」

「もしかすると、本当にこの東武国をまとめて平和にしてくれるのかもな〜。」

 闇勇芸団は功績も名も鰻登りであった。


「大問題だ、氷吾君。」

 戦の構想を考えるテントで煌才は氷吾に言った。

「何も問題はないぞ。闇勇芸団の名はちゃんと上がってるし、金に関してはボンクラ供や倒した相手から充分巻き上げている。っていうかお前も今まで寝てたんだから書類手伝え。」

「闇勇芸団の団員の数は?」

「……11人。」

「そうだよ! 11人だよ! 11人もいるよだよ! だがしかし!」

 煌才は人差し指を上にあげた。

「道化が一人もいなーい!」

 しばらくの沈黙が流れた。

「いや、どうでもいいやん。道化なんて戦場で全く役に立たんぞ。」

「ちげーよ。道化がいないとサーカスになってからショーが盛り上がらんだろうが〜!」

 煌才はそう言いながら、ちゃぶ台返しをした。

「…っ! いい加減にしろー!」

「グヘェ!」

 氷吾の飛び膝蹴りを煌才に喰らわした。

「お前のテンションでモノに当たるな! だいたい道化なんて、この乱世に見つかるはずが…」

「あの〜。」

 少年の声が氷吾を遮ったので、二人は少年の方を向いた。

「ヨウ、闇勇芸団の最年少!」

「おお、和泉いずみ君か。なんのようだ?」

「えーとですね、」

 もじゃもじゃ頭の紫和装の少年は、話を始めた。

「僕の故郷の友達にいますよ。肩書きに道化がついてる子。ってかまあまあ有名な異名の持ち主。」

「本当かい⁉︎」

 煌才は目をキラキラさせて、胸をワクワクさせた。

「でかした、和泉。早速会いに行こう。」

「おい待て、煌才。和泉君。彼の名前と異名を聞こうではないか。」

「……岩本 括正……侍道化。」

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